PA!ZOO!の第20回公演「はなめがね」は、この劇団らしいきめ細かさとユーモアたっぷりではあったが、脚本がかなり弱いために、こじんまりまとまりすぎるといういつもの不満がさらに増幅されてしまった。
さびれた商店街で、青年会の起死回生の活性化企画―降水確率60%以上だと特別サービス―の話が、メガネ店を舞台に展開する。
人と人とのからみがきっちりと描かれているのはいい。思いやりや対抗意識などの心の動きをていねいに描き、時に対立して激昂したりというのもよくわかる。
ただ、それらの人々の発想はそれほど画期的だとは思えないし、青年会のイベントに長姉が反対する理由もないように思えるのだが、それは後に現れることの伏線になっている。その後に現れることがいかにもというシンデレラ譚で、そのことがせっかくの舞台をぶち壊してしまった。
メガネ店を含めた商店街の低迷をどうするか―ということからすれば、若くもない長姉の結婚相手が有名メガネデザイナーで、そのブランドの独占販売権をメガネ店に与えることでメガネ店を再生させようとするのは、天から降ってきた突然の幸運による安易過ぎる逃げの展開で正直白けてしまった。店を救うために長姉がメガネデザイナーにアタックしたというのなら少しはわかるが、それでもそんな結婚あり?とは思ってしまう。
そのような脚本の弱さもあり、俳優もいまひとつのびのびしていないという印象はあるが、PA!ZOO!らしいじっくりと楽しい雰囲気はある。
しとやかな役の渡辺一心を初めて見た。その彼女にロビーで「田中さん」と言ってしまった。そう、やっぱお掃除おばさんの印象が強い。
この舞台はきょうから20日まで7ステージ。若干空席があった。