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《2011.4月−5》

ストーリー性にこだわって、インパクトなし
【フチガミさんのフトモモ (ショーマンシップ)】

作:川口大樹 演出:仲谷一志、三島晃、劇団ショーマンシップ 他
11日(月) 14:00〜16:00 甘棠館Show劇場 1,500円


 展開がトロくて、ブレーキ踏みっぱなし。特に前半がひどい。おかげで頭が熱をもってきた。
 瞬発力も押出しも切れ味も、むかしやっていたコント版に比べて、落ちる。

 3人だけでやっている小さな地域放送局。そこの女性DJが突然、結婚宣言して引退してしまう。そのDJにはストーカーがいるので、探偵を頼むことに。
 片や、その地域の劇団は、座付き作者が書けなくて、公演中止の危機に・・・。

 放送局と劇団と、ペット窃盗グループ。それが入れ混じっての展開になるのだが、放送局と劇団とが初めてコンタクトを持つのは、開演後50分も経ってから。ペット窃盗グループと劇団との関係が出てきたときには、1時間15分も経っていた。
 とにかく前半は延々と、放送局と劇団の状況説明で、話は停滞して動かず、大きなパンチは放たれず、無理やり盛り上げようとしてはすべる、の繰り返し。後半になってやっと話が動き出す。
 俳優の個性も表現力も弱く、脚本のメリハリもなくて、ダラダラとした時間つぶしの舞台が続く。

 多くの人物を配して、多くの俳優を活躍させたい気持ちはわからないでもないが、ダラダラとやり過ぎだ。もっと簡潔なセリフで、もっと個性を際立たせて、半分くらいの時間に圧縮すべきだ。
 むかしのコント版は、ストーリー性が弱く、短く区切られたコントそれぞれのなかで一発ぶちかましていくというスタイルで、インパクトがあった。
 この上演は、ストーリー性にこだわり、それぞれのシーンが中途半端。インパクトのあるシーンを繋げてストーリーを作るかたちのとるなどの工夫は少ない。

 後半やっと3つのグループが絡んできて、やっと話は転がり始めて、それらしい展開になってはくる。
 やや奇矯な人物を配して、漫画的な展開でラストの「爆発」までもっては行くが、無理やりの強引さが目立ち、ツッコミどころはたくさんある。しかも、後半も相変わらず、よけいな状況説明のムダなセリフが目立って、切れ味はついに顕われない。

 演出はありきたりで、脚本を膨らませることも、その欠点をカバーすることもしていない。演技もラフで、テンポよくたたみかけるような展開にはならない。
 演出はもっとはじける方法を考えるべきだし、俳優ももっと大げさにどぎつくやっていい。パワー不足だ。

 この舞台は、7日から12日まで9ステージ。ほぼ満席だった。


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