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《2001.8月−4》

リアルな・近未来の物語・だ
【ロケット発射せり (飛ぶ劇場)】

作・演出:泊篤志
8日(土) 19:00〜20:50 西鉄ホール 3000円


 50年後という近未来の物語だが、SF調ではなくリアルな表現だ。しかし徹底的にリアルかというとそうでもない。そのあたりを面白く観た。

 う〜んと唸らされるのはその状況設定だ。
 2050年、初めての民間人宇宙旅行にコーラ会社の懸賞で当選した人たちの待合室が舞台だ。
 同行する宇宙飛行士、コーラ会社の社員、宇宙旅行会社の広報、さらに宇宙旅行に反対する地元の青年やそのかっての恋人で今は人気女優となっている女性などがからみ進展する。いきいきとした人物をリアルに描いていて、俳優もすっきり端正な演技をみせるが、やや茶飯に流れすぎていて、引き込まれるというまでの構成と密度はないのが惜しい。

 宇宙旅行に反対する団体の反対行動があったりというところが、現在を引きずっていて、しかも広がりを感じさせるのは面白い。しかし忍び込んできた地元の青年と人気女優が元恋人であったなどとこじつけ気味なのところが中途半端ではある。
 結果、宇宙旅行に行きたい人がめでたく宇宙に飛び出すというハッピーエンドはちょっと甘すぎると思う。

 取材による現在の宇宙開発の知識は盛り込まれているが、そのまま過ぎる気がするし、リアルがゆえに50年後のイメージが何とも中途半端で、そのことへの苛立ちはある。リアルに徹するなら5年後の方がまだいい。

 こんなスタンスがはっきりしない感想だが、う〜んと唸った割には文句が多かったか。

 飛ぶ劇場は、シアタートラムで観た「ジ・エンド・オブ・エイジア」に続き2本目だ。代表作の「生態系カズクン」を観ていないせいもあり、徹底的なリアルさを積み上げて作り出した世界がすばらしかった「ジ・エンド・オブ・エイジア」に引っ張られた感想となったが、これは自分でもしかたないことだと思う。


 余談だが、
 舞台のイメージがいつまでも残る芝居はいい芝居だと強引に割り切って感想を書くしかないのかなと思う。
 この「ロケット発射せり」の感想をまとめたのは見終わってからずいぶん経っているが、ストーリーのみならず個々の俳優の動きまで仔細に思い出すことができる。それが形象化されているということだろうか。
 ならばそれだけでいいのか、イメージが残りにくい芝居が一概につまらない芝居かということになると、簡単には断定できない。
 しかしとりあえず、イメージがいつまでも残る芝居がいい芝居だと仮定して、そのあたりで余り悩まずに感想を書いていくしかないかなと思っている。


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