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《2002.12月−14》

栗山さんの◇話は楽しい
【演出家セミナー 作品発表会&アフタートーク (福岡市文化芸術振興財団)】

講師:栗山民也
15日(日) 14:00〜16:20 パピオビールーム大練習室 連続レクチャーパスで無料


*** 推 敲 中 ***

 セミナー参加者による作品発表会を、どちらかというと栗山民也さんの話が聞きたくて見に行った。なかなかおもしろかった。

 作品発表は4作品。なんちゅう取り合わせ!という感じだが、挑戦させようという講師の意図がありあり。丸1日と少しという時間で作り上げたられ作品だからきびしいことを言ってもしかたないが、印象をまとめる。

【桜の園】(演出:安永史明、作:アントン・チェーホフ))
 一本調子でメリハリがないのが惜しい。形にとらわれすぎかと思う。無意識に語られるはずの「玉突き」のしぐさのわざとらしさが目立ったが、ことし新国立劇場で上演された栗山民也演出「桜の園」の佐藤慶の演技でも不自然だったからしかたないか。

【村長とサギ師】(演出:太田美穂、作:井上ひさし)
 てんぷくトリオのために書かれたコント。だましたつもりが実はだまされていたというどんでん返しの妙までを、テンポよく進めていて楽しめた。笑った。

【驟雨】(演出:前原寿代、作:岸田國士)
 つくりすぎで、やりすぎ。しゃべりが強すぎて、さりげなさ・自然さが乏しいため、人物の意識の流れが見えない。アプローチを変えたがいい。

【スターと吹きかえ役】(演出:岩井眞實、作:井上ひさし)
 動きのあるのはいいが、人物が類型的で吹っ飛ばず、ユーモアの切れはいまひとつ。

 以上の上演時間が約50分で、休憩後の午後3時からまず参加者の感想が述べられた。
 まず講師から「芝居はそうたやすくはできない。当然衝突が生まれる。必ずぶつかるものだから、それぞれの価値観をもってぶつかりあうことが必要。」との話があった。

 参加者の主な感想は以下のとおり。
@クリエーティブが見えてきた。
A自分のなかで変われた。
B演出家と俳優がどうコミュニケーションをとっていくのか見えて突然楽しくなった。
Cいい台本のセリフは憶えなくてもいいというのがわかった。
D相手と向き合って、対等に自立してやるべきものだと思った。
E役者の気持ちが大事だとわかった。
F自分の感じているものをどう伝えるか悩んでいた。見失っていたものの方向性をいただいた。
Gイメージはあっても表現するのはむずかしい。コメディはむずかしい。
H思っていることを他人に伝えることがいかに大変かわかった。
I演出ではなく台本の言葉で観客が笑っていることに打ちのめされた。

 あと一般観客も含めてのトークでの講師による言葉をあげておく。
@人は世界にどうやって向き合っても正解はないことを如実に表すのが芸術である。初日にできたと思ったことは一度もない。
A言葉を吐くことは暴力にも武器にもなる。有効に使う必要がある。
B演出に共通的な文法はない。作品がそのつど違うのだから。だから毎回探しながらやっている。
C物を見る、物を聴くという修練がいちばん必要。
D劇作家の言葉のなかの距離感と温度を測ることが重要。相手の声があり、それが何かを動かすから動く。はじめからわかったというのではダメ。
E存在を見せるのに方法論や文法は要らない。

 以上のように、作品発表も楽しめたが、いろいろな意見が聞けたのがなによりよかった。
 参加者は22名。観客は50名というところだろうか。


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