ドラマがこうも弱くては、テクニカルで盛り上げようとしても、おもしろくなりようがない。
「日本のミュージカルはこんなに面白いものだったのか」という宣伝文句を正直に信じた私がバカだった―という舞台だった。劇団四季のダンスや歌のレベルは上がっても、肝心のドラマづくりの弱さをみごとに露呈してしまった舞台だった。
東京から東北の村に転校した勇太(=ユタ)。友だちからはいじめられ、村の生活にとけこめない。
そこで会った座敷わらしたち。かれらに励まされてユタは元気を取り戻していく。
基礎が弱いのはストーリーを書いただけでもわかる。
陳腐なストーリーに演出も常套的で、時にフライングなど見せたとしても、ユタが乗り越えるべきものがはっきりしない状況、それも大したこととは思えず興味が持てない状況ではどうしようもないだろう。
前半では、ユタへのいじめがしつこく繰り返されるが、何のアイディアもなくて堂々巡りばかり。後半も、結末は見えているのだからどううまく膨らませるかがポイントなのに、チョコチョコとしたアイディアばかりでほんと何も考えていない。
結局、座敷わらしに助けられてケンカに勝つと、ほんとは仲良くなりたかった、だと。歌詞は陳腐で説明調。役の個性もありきたりになり、叙情性も弱い。大事なものが抜け落ちている。
この舞台は6月29日から7月22日まで25ステージ。きょうは土曜のマチネにもかかわらず、空席が目立った。