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《2005.7月−6》

宙を舞う魔女たちに、うっとり
【イーストウィックの魔女たち (東宝・博多座)】

脚本:ジョン・デンプセイ 演出:山田和也
9日(土) 17:30〜20:25 博多座 2940円


 宙を舞う魔女たちのなんというチャーミングさだろう。もううっとりしてしまう。

 イーストウィックの町にあらわれたダリルという男は実は悪魔。バツイチの女三人を誘惑していっしょに過ごすうち、女たちにも魔力が宿る。
 男たちにも暗示をかけ、町はダリルに席巻されんとする。ダリルの本性に触れてはたと目覚めた女三人、ダリルに挑んで町から追い返そうとする。

 魔力を得た、アレクサンドラ(一路真輝)、ジェーン(涼風真世)、スーキー(森公美子)の三人が宙を飛ぶシーンには、もう夢見ごこち。ぜいたくな配役だ。一路真輝、涼風真世のテニスウェア姿やドレス姿など、きれいな体の線を見せてくれて、サービスたっぷりにその美しさを強調する。美しい人を見るのは、それだけでもう感動だ。
 森公美子の情感たっぷりの歌が聞かせる。説得力というよりは包容力があり、暖かいものに包まれたような心地よさだ。
 ダリルの陣内孝則は、かなりどぎつく悪魔を演じているが、体の動きがやや硬い。ダンスができれば、ずっと表現の幅が広がるだろう。それでも、追い出されて悪魔の国に帰っていくところでは、悪魔の孤独が匂った。やりたい放題とも見えるフェリシア役の大浦みずきのねっちりとした演技もおもしろい。

 話の眼目は、ダリルによって生き生きとした生活をとり戻した三人の女が、ダリルの危うさに気がついて、ダリルに反撃することになるということ。善とも見えたダリルが、その本性を顕わして悪に反転する。その展開がきちんと書き込まれている。楽しさの裏におぞましさを描くなど絶妙で、さすが!と思ったら、日本人による脚本ではなかった。
 開幕前、舞台には巨大なオッパイがふたつ。それがパックリと口をあけて舞台装置になる。オッパイが引っ込めば、舞台には巨大な女体の胸から腰の形、そのパンティのところが巨大なくちびるになっていて、一部オーケストラピットの上にまでかかっている。女体の上での演技も多いし、町の家々はオッパイ形だったりと、この舞台そのものが性を強く意識していることを強調する装置になっていた。

 この舞台は3日から27日まで37ステージ。一階席、二階席には若干空席があったようだ。


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