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《2005.7月−5》

遅々として進まない展開に、ウンザリ
【裁きの槌 (エコロジーな缶詰ワールド)】

作・演出:ラクーンドッグ
9日(土) 13:30〜14:20 甘棠館Show劇場 招待券


 全体の7割以上がよけいなセリフという、けっこうつらい芝居だ。
 観客がついていけないという芝居の逆で、ノタノタしていて観客に置いてきぼりを喰ってしまう、そんな芝居だ。

 取調室の、容疑者の男と女刑事。
 男のトリックを見破る刑事。に対し、とことん犯罪の正当性を主張する男。

 開幕からいかにも思わせぶりな動きだが、それが本筋に結びつくことはなく、ただトロいだけというのはあとからわかる。
 謎解きのメリハリは、観客の興味をひきつけてからやってこそ出てくるのに、女刑事は問題と答えをいっしょに言う。だから当然、観客にはトリックを見破るヒントはひとつも提示されない。アンフェアで、演るほうの自己満足の世界でしかない。
 そんなふうだから、男の動機が最後に語られるが、その理由が、「被害者の身勝手を正して、正義を実現するため」だと。こんな公憤ともいえないようなことで殺人までしていたら、世の中殺人だらけだろう。勝手にしてれば、としか言いようがない。

 セリフは、具体的に言ったことにわざわざ抽象的に解説を加えるという、その冗長さに耐えられない。わかりきったことばかりしたり顔で言われるのは苦痛だ。しかも一本調子で、大事な謎解きを何の感興もなく淡々とやってしまうというバカバカしさ。舞台は弛緩しきっている。
 この舞台の内容だと、15分の上演時間で十分だ。そこから男が反撃してひっくり返してしまうような展開など、おもしろくする要素や工夫の余地はいっぱいあるのだから、出し惜しみせずにドンドン出して練り上げればいいのだ。

 この舞台は、劇団エコロジーな缶詰ワールドの旗揚げ公演「裁きシリーズ三ヶ月連続公演」の第一ヶ月目で、きょう2ステージ。20人弱の観客だった。


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