モノクロームサーカスの坂本公成と、元・水と油のじゅんじゅんとの公演は、互いの個性がせめぎあって噴出してくるパワーを楽しめた。
「水の家」(演出・振付:坂本公成、森裕子) 25分弱
1m強の正方形の机の上で、男女ふたりのダンス。ふたりのところだけが明るく、雨の音が始めから終わりまで響いている。
狭い空間での動きの激しいダンスなのに、ふたりの身体が触れ合うところは少ない。そのストイックなところが、最後まで引っぱる推進力になっている。
ひとりが押すとひとりが引く。近寄るとくるりとかわして逆方向に廻り込むなど、ふたりの間の一定以上近づけないような距離感の表現はいい。
わずかに男が女の腹を触る。しかし、抱こうとして回した手はするりとかわされる。女が男を触ったあとも同じ。
狭い場所での位置的な近さと対照的な心の遠さが、互いにわかりあって求め合うようになるまでのもどかしさを、ていねいに描いていて説得力がある。
「deskwork」(演出・振付:じゅんじゅん) 15分強
真上からのライトが平土間に四角い形を作り、それがdesk。物書きの苦悩をじゅんじゅんのソロのダンスとパントマイムでユーモラスに踊る。
大きな動きもぴたりと決まる。途中まわりが少し明るくなると、deskを大きく丸く囲んだボツ原稿。その中から本を見つけると、本を相手のダンスがやや叙情的に踊られる。
全体を通して、切れのいい、ユーモラスな動きが実に楽しい。
「緑のテーブル」(演出・振付:じゅんじゅん) 約30分
中央にテーブル。テーブルの上には本物の芝生。外にあるべきものが内にあるという、入れ混じりを象徴する。
テーブルのまわりにイスが4つ。ダンサーは男2人、女2人の計4人。1対3、2対2などなど、組み合わせがドンドン変わる。対立してのやりとりは、戯れているという印象。
この作品にもパントマイムの動きが入っていて、ダンスにメリハリをつける。テーブルにしがみついて足だけ走る格好をする、その動きの美しさに見とれる。
みんなから抱え起こされてようやっと自立するときの、頭のテッペンを天井から吊るされたようなすばらしい動きなど、印象的なシーンの連続で飽きさせない。
2人のダンサーのうち1人がシャドーというのも、横に広がる以外にも、テーブルの上下で対称形でシンクロさせたダンスなど、視覚的に新鮮で楽しい。
そんなふうで、たくさんの情報とアイディアが詰め込まれていて、それを的確に表現していればこそ、観る者を引きつけてやまない舞台になる。
終演後、アフタートークが30分。じゅんじゅん、坂本公成、山中透(音楽担当)の話を聞いた。司会はFFACの横山さん。
今回の企画は、机についてのダンスを並べてみることで作り方の差異を浮かび上がらせることが目的だったということだが、それはよくわかった。
「緑のテーブル」の作り方について、音楽の山中透も実際に稽古場に来て、音楽もいっしょに作り上げたという。
山中透は言う、「振付担当と、ダンサー4人の動きについて話すことから、やりたいことを掴んでいく形で、互いに勘違いしているのもあえて決めないで、いっしょに絵を描くイメージ」と。
だからじゅんじゅんも、「山中透の音はすき間がいっぱい。書き過ぎは気持ち悪いが、そうでないのがいい」と応じた。
この舞台は、きょう1ステージ。ほぼ満席だった。