アニメの原作をもとにしながら、女性5人による舞台として、アニメとはまた違ったおもしろさを引き出してきていて、たいへん楽しめる舞台だった。
かつて一世を風靡した女優・藤原千代子。ようやくその一代記を聞くことになったインタビューアー。
千代子の思い出は、出演した映画のエピソードと渾然一体となって、波瀾万丈の物語になって行く。
5人の女優が多くの役を演じる。
それも、1人の女優が多くの役を演じ、1つの役を複数の女優が演じる。変幻自在だ。そしてついには、どの役をだれが演じるか、観客にリクエストまで取る。
そのような役と俳優のダイナミックな入れ替わりは魅力で、役も女優もそれぞれの個性が多面的に引き出されてきて、互いを大きく膨らませる。女優は大変だろうが、観ていて楽しい。
少しスモークがかかった、白を基調としたスッキリとした舞台を、照明をダイナミックに切替えながら、小気味よく場面場面を際立たせる。
音楽をほとんど流しっぱなしにして、セリフはマイクを通す。ダンスと歌をうまく挿入していて、飽かせない。
観客の想像力を信じた、シンプルとも見える表現も、うまく工夫されていて心地いい。
帽子をかぶればむかしからの千代子を知るインタビュアー・立花源也、メガネをかければ若いカメラマン・井田恭二。時代劇のお姫様は、白い長衣を羽織るだけでわかる。
初恋の「鍵」の君を追い求める千代子。その千代子を追い求める立花源也。
そういう二重の追っかけ構造になっていて、それを結びつけるものが文字どおり「鍵」。虚実取り混ぜた、時間も空間も大きくひろがる壮大な話が、それによってようやく繋ぎとめられている。
そのような原作のストーリー展開のみごとさだが、それを大胆な舞台化で、うまく舞台に展開してみせた。
アニメの原作をいちど解体して、演劇的な表現が可能なように再構築している。
その際、女優たちの能力の限界ギリギリのところまで踏み込んでいる。女優はその挑戦にみごとに応えた。テクニカルは、女優の魅力を強調するように工夫されている。そのようにして、絶妙に組み合わされた個性的な5人の女優の個性が存分に発揮された。
それにしても、この能力の限界ギリギリのところまでというのは、末満健一が劇団「惑星ピスタチオ」所属だったときけば納得できる。舞台を終えたあと物販する女優もすごい。
この舞台は、福岡ではきょうとあすの2ステージ。よくぞぽんプラザホールで上演してくれた。満席だった。