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《2013.9月−9》

ちゃんと作らないとおバカにはならない
【たすけて青春ピンチヒッター2京都インフィニティ (WET BLANKET)】

作:大串到生 演出:大串到生・江利角直由
23日(月・祝)19:35〜21:30 ぽんプラザホール プレゼント・チケット


 久しぶりに観たWET BLANKETの舞台は、いくらおバカなエンタメ活劇が狙いだとはいえ、あまりのいい加減さとどうしようもない幼稚さについていけず、観続けるのが苦痛という舞台だった。

 ヒーロー「ピンチヒッターJET」に変身できる高2の奥田マサタカが、京都への修学旅行で、日本征服をねらう悪の大企業「マイクロホスト社」の都市破壊再建計画「京都インフィニティ計画」に立ち向かう。

 この劇団の舞台づくりはたぶん、俳優が目立って自分たちがいちばん楽しめるシーンをまず設定して、そこを繋ぐプロットを設定して、そこを埋めるシーンを作っていくやり方なのではないか。エンターテインメントとしてはそういうやり方はあるのだろうし、最後まで引っぱる物語の展開としては悪くはない。
 問題なのは、あまりに杜撰なリアリティのない状況設定なので、いたるところ非常に甘い手前勝手さで逃げていることだ。火をつけたり盗んだり殺したりと、いくら悪役とはいえ不法行為やり放題だし、火事になっても119番しないし、というような不可解なところや、いつの間にこうなったんだ?というようなところなど、違和感を感じるシーンがゴロゴロしていて、ほとんど何も考えないで書きなぐっていることが見えてしまう。そんな話の展開を喜んで受け容れられるほどにはわたしの神経は大雑把ではない。

 何も考えていないことは、ヒーローの名前が「ピンチヒッター」で極悪企業が「マイクロホスト社」でそこのドンが「ビル・ゲート」などという安易過ぎるイメージ借りとネーミングや、陰陽師の悪霊退治のツールが八ツ橋という合体ツールだったりという発想の安直さなどからもわかる。自分のものにせずに使うパクリに近いものもかなり見受けられる。そういうところに知性が感じられず、その幼稚さに辟易して拒絶反応を起こしてしまう。
 サービス精神たっぷりのアクション場面をもっと際立たせるためには、それを支えるリアリティが要る。荒唐無稽を狙うからこそそのあたりがいい加減ではダメだということだ。

 この舞台は、21日から23日まで6ステージ。満席だった。


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