鼓童による太鼓を中心にしたパフォーマンスをベースに、板東玉三郎の舞、愛恩羽麗のダンスをうまく配し融合させて、目にも耳にも贅沢な楽しみを与えてくれるセリフなしの音楽舞踊劇だ。
アマテラス(天照大御神)の弟スサノヲが高天原で乱暴を働き、そのため太陽神であるアマテラスが天岩戸に隠れて世の中は闇になり禍が発生した。八百万の神々はアマテラスを岩戸から出そうと手を尽くす―という記紀神話を題材にしている。
開幕前から舞台中央に大太鼓の皮面いっぱいに照明が当てられ赤い太陽が形作られている。オープニングはその大太鼓のソロ演奏が5分ほどあって、大太鼓の多彩な打ち方が楽しめる。そこから30分ほどは、スサノオの暴虐ぶりに耐えられずにアマテラスが天岩戸に隠れるまでが表現される。
坂東玉三郎のアマテラスは、袖の長い朱色の優雅な衣装でいかにも太陽神で、後ろにたなびかせる同色の長い布も美しい。アマテラスの舞は、3台の箏や笛などでやさしく演奏されて、その優雅さを際立たせる。
スサノオ(鼓童の石塚充)は対照的な黒の衣装で、後ろにたなびかせる長い布でその荒々しさやアマテラスとの対峙の緊張が表現される。色と動きを使った2人のせめぎあいはわかりやすく美しい。スサノオは勇壮に大太鼓を打ってアマテラスを圧倒し、嫌気がさしたアマテラスが天岩戸に隠れて舞台は真っ暗になる。そこまでが第1幕。
第2幕はまず、アマテラスを天岩戸から引っぱり出すための鼓動らしい太鼓パフォーマンスと踊りがじっくりと繰り返される。太鼓は小さなものからだんだん大きなものへ、延べ30人以上の出演者による太鼓パフォーマンスは、いくつもの種類の大小の太鼓などの技法とその組み合わせによる多彩な演奏が堪能できる。
愛恩羽麗のアメノウズメが登場すると妖艶な雰囲気に一変する。太ももまで見える艶っぽい濃い赤のコスチュームでのダンスは色っぽくて悩殺されそうになる。
天岩戸が開いてアマテラスが出てきて喜びのパフォーマンスが15分ほども続いて終幕だが、アンコールがいっぱいのカーテンコールがさらに10分も続くというサービスぶりだ。
板東玉三郎を芸術監督に迎えた鼓動と玉三郎の舞台は多彩で楽しませてくれたが、玉三郎とのコラボのために鼓動は歌舞団ぽく変化してきているのかな。
この舞台は博多座では5日から29日まで23ステージ。満席だった。