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《2013.9月−11》

薄っぺらな舞台
【辻三十郎道中記〜本当に大事なものは〜志免編 (縁劇繍団つむじ)】

作:旋風三十郎、演出:秋村有紀
29日(土)15:00〜16:00 H732シアター 1,000円


 国際コメディ演劇フェスティバルに地元から唯一参加のこの公演は、脚本がひどい上に演出が機能しておらず俳優たちの演技は縮こまっていて、このごろ観たなかではずば抜けてつまらない舞台だった。

 浪人・辻三十郎は、とある宿場で、付け火をされて当主の父を殺されたせんべい屋を再興しようとしている翔吉とその恋人(かな?)つばめが、町を取り仕切っている本村組からいじめられているところにに遭遇する。

 この舞台を観る気になったのは、「黒んぼと犬たちの闘争」のリーディング公演(福岡演劇工房)での旋風三十郎の演技が、出演者のなかでただ一人まともだったからだ。
 コメディ演劇フェスティバルだからといってムリにコメディ色を出そうとして失敗したということもあるのかもしれないが、この舞台での旋風三十郎の演技はひどいものだったし、ほかの劇団公演で見かける他の出演者もどうしようもないレベルの演技だった。

 題名からもわかるとおり黒澤明の「椿三十郎」のパクリで、だったらちゃんとマネすればいいのに、途中からふにゃふにゃになってしまう。
 本村組の親分・権助がつばめを拉致して監禁するのがうまいせんべいを作らせるためという口実だが、同居する権助の愛人・お藤はいきり立つでもなし。そのあと、つばめがお藤の子だった、というあまりに安易な展開になって、果ては権助お藤のラブラブで決着といういいかげんさだ。そんなところでガス抜きされては対決は吹っ飛び、アクションがアクションにならない。

 脚本もひどいが演出もなきに等しく、俳優たちの好きなようにやらせている。
 その俳優たちは、あまりに単純な役柄だからか類型的で単調な演技で、何の工夫もなく役を膨らませることをまったくしていない。そんななか、あざとい演技の権助役の岡本斗志の存在感だけが目立ち、舞台をかっさらって一人舞台にしてしまった。期待した旋風三十郎の演技は、草食系を通り越して脱力系か虚弱体質か、という感じで、パロディと言えなくもないが、それにしても印象が弱すぎて存在感がなさ過ぎる。

 この舞台は、国際コメディ演劇フェスティバルでの上演は27日から29日まで5ステージ。20人強の観客だった。


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