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《2013.9月−14》

状況設定はおもしろいのに
【威風堂々 (超人気族)】

作・演出:橋本隆佑
29日(日)19:05〜21:00 枝光本町商店街アイアンシアター プレゼントチケット


 着想と状況設定はおもしろいのに、うまく構成できていなくて、演出も演技も十分に練り上げられていないために、時に“ウ!”というところはあっても、全体としては平板で雑駁な舞台になってしまっていた。

 ランダムに選ばれた人間にのみ生活は与えられ、その地域と壁で分断された地域に住む選ばれなかった人間は、選ばれた人間が出すゴミで生き延びている。

 舞台は大きな鉄パイプ組みの壁が覆い、中央に出入り口があって、そこを守る兵士が2人。壁の下部にはゴミの詰まった黒いゴミ袋がたくさん捨ててある。殺伐とした風景のに、男女2人の芸人が地図を見ながら行き場所を探し、壁の向こう側にいる姉にお金をもらいに来た妹や気の狂った老婆がいる。
 話は一向に進まない。肛門のゆるい兵士の話で延々と引っぱったりと、ちょっとした趣向をこれ見よがしにダラダラとひけらかすだけで何もからまず、練り上げられず畳みかけられないから舞台にテンポは生まれず、ガチャガチャギスギスと蛇行したりループしたりでイライラが募る。そんな展開でも客席から時どき笑い声が起こるが、それは知り合いに受けているだけだ。

 途中から舞台が壁の向こう側に変わると、ちょっと変化が出ておもしろくなってくるような気配がしてくるが、それでもトロい展開は相変わらずだ。同じ俳優が別のキャラで出てくるところなどはおもしろいが、それがドラマの展開には結びつかない。ただ、ユートピアかと思った壁の向こう側の世界が、おもしろくもない管理社会であることは臭ってくる。
 ラスト近く、唐突な感じで始まる覆面レスラーによるファイトはどうにか見せるが、それでごまかしてそのまんま終ってしまった。ドラマをドライブするものがなくて置いてきぼりで、欲求不満は最後まで解消されない。発想はよくてもそこから何も練り上げられずほとんど何も展開しない。独りよがりで観客は視野に入っていないようだ。
 俳優たちの演技は多くがぼやけていて不安定で、安定しているのは田中克美だけだが、それは体形と体重のためばかりではない。

  この舞台は27日から29日まで5ステージ。少し空席があった。


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