遊び心タップリでバカバカしさ満載の舞台に笑い転げた。きれいに抜けた二塁打という感じのスカッとした舞台だった。
王族のお城でのパーティに来た貴族が、トイレに行って迷って城内をグルグル。パーティ会場に帰れなくなってしまう。
舞台全面を覆い尽くすようにヨーロッパ中世のお城の一部が組まれている。ほんとに、タッパの低い西鉄ホールによくぞこんな装置作るわ。中央手前が見通しのいい踊り場で、その奥上方がパーティ会場だが、優雅な貴族はよじ登れない。上手上方にパーティ会場と調理場の間の渡り廊下。下手は大きな窓を持つ別棟で屋根伝いにしか行けない。まぁ、考えつくされたその装置が主役みたいなものだ。
由緒正しいが落ち目の貴族とその従者は最初から最後まで城内迷路をウロウロして幾度となく踊り場にさしかかる。途中からやはり迷ったもう1組の貴族が加わる。散々知恵を絞って迷路からの脱出を図るが、ことごとく失敗する。
そのあたりの仕掛けを楽しむのが前半だが、後半になると道化や乞食のドタバタが高進し、怪獣が現れ、タイムパトロールが現れ、悪の呪術師と善の呪術師が現れて闘い・・・エ〜ッとどんなだったっけ。まぁ、そこまで来て話が収束するわけはなく、目くるめく展開で派手に発散してパンチアウト。その勢いのあるバカバカしさが秀逸だ。とにかく、演劇を遊び倒してやろうという心意気が伝染してくるような舞台だった。
ほんとにこの舞台、劇団の知的レベルの高さに支えられた演劇センスのよさが光る。
ちょっと見には猥雑で支離滅裂なものが、舞台の進行とともにそれぞれの位置を占めていく。それとは反対に話のほうはどんどんすっ飛んでいく、という絶妙な構成だ。
俳優たちの役へのアプローチは鋭いがガチガチではなくて、あるべき役と俳優の個性と演じらる役の重なりを微妙にずらして、糊しろというか演技に余裕を持っていて、それが役の絡みの柔軟さや自分ツッコミのやりやすさに繋がっている。そういう演技だ。
この舞台はきょうとあすで3ステージ。少し空席があった。