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《2014.9月−4》

康本雅子に、鷲づかみにされた
【ダンスダイブウィーク ショーケース 第1日 (21世紀ゲバゲバ舞踊団/康本雅子)】

21世紀ゲバゲバ舞踊団/康本雅子
6日(土)14:05〜15:25 北九州芸術劇場 小劇場 2,000円


 康本雅子のダンスに鷲づかみにされた。思い切りのいい振付が、抜群のテクニックと並外れた身体能力で間断なく繰り出され、あ!ヱ?ドキッ!の連続だった。

 北九州芸術劇場で開催中のダンスダイブウィークのなかのイベント「ショーケース」は2日間4団体の出演で開催される。その1日目の21世紀ゲバゲバ舞踊団と康本雅子のダンスを観た。


○21世紀ゲバゲバ舞踊団「AT/AT」 (振付:21世紀ゲバゲバ舞踊団)

 21世紀ゲバゲバ舞踊団は、桜美林大学の総合文化学科卒業生たちが2011年に結成したダンス集団で、8人のメンバーからなる。この「AT/AT」は、毎年開催している「ゲバゲバの回」で発表した小作品群から女性デュオ「AT/AT」に男性を含めたトリオバージョンに再構築した新作。出演は 井上大輔・辻田暁・遠江愛。題名とデュオ名の「AT/AT」は、女性出演者2人の頭文字からつけている。

 「カラダを動かし、動かし、動かして潜っていく」(リーフレットより)。海の底のようだ。ゆらゆらと浮遊する井上大輔が踊って退場。そこに長い髪を垂らして顔が見えない辻田暁をおんぶした遠江愛が登場してペアのダンス終盤、再度井上が登場して、重なった辻田と遠江を踏んづける。
 それぞれのシーンは、ダンサーの技量と個性が現れていて見せる。井上はの大きなゆったりとした動きは海中を漂うクラゲかな。どっしりしていてしっかりした踊りで存在感たっぷりの遠江はサンゴで、潮の動きに揺れる辻田がイソギンチャクか―と勝手にイメージしながら観ていた。個々のシーンはそれなりに楽しめ、大きな流れはわかるんだが、メリハリと統一感には乏しい。全員振付演出というこの舞踊団の創作手法と関係しているのかもしれない。上演時間35分強。


○康本雅子「絶交わる子〜2人バージョン」 (振付:康本雅子)

 CMやミュージックビデオの振付でも活躍する康本雅子が今回上演するのは、2012年に上演された康本雅子カンパニー「絶交わる子、ポンッ」の2人バージョン。自身も含め8人が出演した「絶交わる子、ポンッ」を、出演者の1人であった菊沢将憲とのデュオ作品に作り直した。
 「男と女の関係」を描く。朝起きて家をでるまでを菊沢のソロの早送りマイムで見せ、康本が加わったデュオで繰り返す。交尾前のネコのようにじゃれあう、四つんばいで重なって歩く、互いに手を出し合って着かず離れず、ムリに抱き合いすねて外す などなど恋しくなったりイヤになったり、いかにもアルアル!という切実な関係の機微をグイと引っぱり出す。性交に至るまでの身体とそれに弄ばれる精神の表現は、リアルなのにどこか浮いているような軽さがある。全体としてとてもわかりやすい作品だ。

 康本雅子のキレイさにまずビックリさせられるが、そのダンステクニックにはさらにビックリさせられる。康本のダンス表現は、抽象的にして置き換えるのではなくて、対比したり細部を強調することで際立たせる。そのために大きな動きは無論、繰り返すような小さな動きまで実に繊細に表現し、ときにそれらを瞬時に切替える。
 デュオの相手になぜ菊沢将憲を選んだのだろうか。菊沢はアフタートークで、演劇は“何か”から入って“動き”に至るが、ダンスは“動き”から入って“何か”に至る、という違いがある、と話していた。このあたり、振付家には計算どおりだったのか、デュオの相性がいい効果を生んでいた。
 題名の「絶交わる子」は、「絶交」「交わる」「わる(悪/割る)子」とか、いろいろに読めるところを狙っているということだ。シーンごとに切れ味よく描かれる男女の関係は多彩で、女性をけっこう突き放して描いている。上演時間約30分。


 終演後に出演者全員が出られてのアフタートークが約25分。素顔が見られるのがいい。
 この舞台はきょう1ステージ。満席だった。


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