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《2014.9月−3》

勢いある任侠モノのパロディ
【侠宴やんや リベンジ! (南無サンダー)】

作・宴:安部将吾
5日(金)20:05〜21:35 扇貝 1,800円


 やりたい放題にいろいろ詰め込んだ任侠モノのパロディで、やたら勢いがあってそこが楽しめた。

 “農侠会”(本部)配下の、譜代の武闘派“戦国組”と新興の背広やくざ“華電会”との、本部を巻き込んだ抗争をド派手に描く。

 チケットが右手の形で、もぎりはその小指をはさみでチョキッと切る。
 劇場に入ると、中央に40席ほどの客席が設けられ、そのまわりが高さ2メートルほどの鉄網で囲まれている。鉄網は10センチほどの大きな網目で、10本以上立つ鉄パイプに固定されている。客席を囲むフェンスの大きさは8メートル×3.5メートルくらいで、客席に入ると閉じ込められた感じになる。フェンスとまわりの壁の間の1メートル〜1.5メートルほどの幅で客席を取り囲む空間が演技スペースで、俳優たちはときに客席のまわりをグルグルとまわる。
 「とんちんかんちん一休さん」の歌が終らないうちに、白塗りで赤フンドシだけの10人近い男(安部将吾だけが赤フンドシの上に赤い上っ張りを羽織っている)が登場して、「エッサッサー」とパフォーマンス。ここまででじゅうぶんビックリする。

 “農侠会”が親分の娘も含めて3人、戦国組”が2人、“華電会”が始まってすぐに殺される組員も含めて3人。出番の少ない暴走族“都離悪巣(トリアス)連合”メンバーは“華電会”の組員を演じる俳優たちの2役だ。さらに情報屋の女性が加わる。
 そんな人数でやくざの抗争を描く脚本には、いろいろ工夫がなされている。新興やくざの権力奪取の陰謀が顕れ、正統派やくざは追い詰められるが、友情で結ばれた正統派やくざが反撃して乗越えていく。情報屋を配して状況をうまく説明していて、「実は・・」とコロッと変わる人物の関係も「何で?」と感じるようなところはない。会話の部分とアクション部分を頻繁に切替え、小さなところは蹴っ飛ばしながら、スピーディにグイグイと展開していく。

 ゲージの中に閉じ込められて前説などで「こわいよ!こわいよ!」と吹き込まれて、開幕前から好奇心とちょっとした恐怖心に駆られるが、それも舞台を際立たせるための演出だ。
 思い切り暴れるためにこの舞台を作っているようなところがあって、擬闘は迫力がある。異常なまでに大げさなアクションや大声でわめく演技でテンションを高めていく。蛍光する剣だけを見せる殺陣シーンや観客の頭上での対決シーンなどあって、最後の決闘では客席に侵入してきて客をどかせて暴れまわる。バイクを登場させたりと、やれることはドンドンやるという気概にあふれている。ハイテンポな舞台にメリハリをつける照明や音響の効果も大きい。
 白塗りのため若干わかりにくくて役を混同しそうになるが、イケメンの若手俳優たちが生き生きとしていてなかなかカッコよかった。

 この舞台の初演は2010年で、今回の「リベンジ!」版は博多弁バージョンということだが、ゴテゴテではない。
 この舞台はきょうからあさってまで5ステージ。満席だった。


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