福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2001.5月−3》

原初の演劇の魅力がある
【白夜 (昭和54年)】

作・演出:鎌田貴嗣
12日(土) 14:00 シアターポケット 800円


 初めから終わりまで、ほとんど動きらしい動きも会話もない芝居なのでイライラが高じ、怒りにまかせてアンケートに「最低!」と書いた。
 それがどうしたことか、人物が金網の塀にもたれながらの虚ろな表情などなかなか忘れがたいシーンがあって、その印象がだんだん強くなる感じなのだ。観たときの印象があとでさらにふくらむという経験はかってなかった。

 暗い芝居だ。話も暗ければ、舞台の照明も顔もよく見えないくらい暗い。
 恋人を殺した青年が、友人を呼び出して、シュラフに入れた死体を捨てるために海辺の公園に来ている。途中、車で猫をひき殺してしまった。友人は、猫の死体と一緒に崖から飛んで死んだ。青年は恋人の死体を捨て、自分も死んでしまう。

 前半は、ときどき発する友人の、猫を殺したことを責める言葉にならないうめきか絶叫だけだ。後半はシュラフに入った恋人の死体と青年のことばのないやりとりだ。
 絶叫よりも、猫や恋人の死体とからむときの人物の表情がいい。ほとんど無為に舞台にいるだけのように見えるが、その死への障壁もなくなるような寂寥感が出ていた。それが印象に残る。

 シュラフの中の死体が、新聞紙が座布団なのかいかにも軽そうというのがちょっと。実際に人間が入っていたらまた別の面白さが出たかもしれない。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ