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《2001.5月−7》

これはスラップスティック・コメディだ
【あやまりません (池田商会)】

作・演出:池田祐樹
29日(火)19:30 ぽんプラザホール 1000円


 この作品は、劇団池田商会の第1回本公演である。それが何ともおもしろい。説明しがたいおもしろさで、私がいままでに福岡で観たことがない系統の作品だ。
 どこかに頼りになるものを見つけようとして、小林信彦の「世界の喜劇人」で「スラップスティック・コメディ」と言っているのに近いのではないかと思い、その意味を調べてみると、「映画独自の形式をもった喜劇」と説明されていていて、振出しにもどってしまった。

 しかしこの作品のイメージは、トーキーの普及とともに衰退した「スラップスティック・コメディ」に近いのではないかという気はする。(その対極にあるのが、森繁久弥に代表される東宝喜劇というのはわかるし、小林信彦が東宝喜劇を全く評価していないのもわかる。)
 一見ちゃらんぽらんに見えるが、軽く、湿っぽくなく、ギャグをちりばめ、現実を笑いのめして、ウッウッと笑わせてしまうところなど、大きな計算がありそれがけっこう成功している。

 上演の目標は高いのではないかと思う。細かい表現レベルの問題はあるにせよ、その作品レベルもまたけっこう高いと思う。もっとも、やるほうはもともと作品レベルなど問題にしていないのかも知れないが。

 少し具体的に見ていこう。
 といっても、面白かったことだけ覚えていて、ストーリーはおろか、何で面白かったのかさえすぐに忘れてしまっているが、この場合そんな芝居作りがいいと思うのだ。
 せりふによるギャグと動きによるギャグが、低いレベルで融合している。アクロバット芸、パントマイム芸などない俳優の芸動きは、完成されないおかしさがある。
 その開き直ったような乾いた雰囲気がいい。

 スラップスティック・コメディらしさの特徴か、現実を遊離していて、飛躍し、原則無視で、本当らしさと論理性の排除も徹底していて気持ちがいい。後半登場する宗教者に見るように、まったくそれらしくない上に一貫性がない人物たちが笑わせる。
 が、反面、現実を切るのにこんな手があったのかとも感じさせられる。その手法は、生暖かいテーマ主義へのアンチテーゼとも読める。

 ちょっとほめ過ぎかなという気がしないでもないが、この傾向を徹底してくれれば福岡の演劇シーンに付け加えるものは大きい。今後に期待する。


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