福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2001.6月−1》

げんき!げんき!一志!
【ダンス!ダンス!竜馬! 劇団ショーマンシップ)】

作・演出:市岡洋
3日(日) 15:00〜17:50 鳥栖市中央公民館 2500円


 劇団ショーマンシップの最新作「ダンス!ダンス!竜馬!」は、この劇団らしく元気がよくて楽しい舞台だ。鳥栖中央公民館で観たが、かなり大勢の子供を含む老若男女入れ混じった300人の観客を、うまく引っぱっていって大いに沸かせた。何とか楽しませようという努力の成果が現れていた。

 作・演出の市岡や主演の仲谷がかって所属していたテアトルハカタの演出家である野尻敏彦の大衆劇路線の影響は感じられる。しかし、完成度はともかく、当時の野尻演出による菊田一夫や北條秀司の名作の上演よりもはるかに活気がある。
 大時代的に迫るかと思えば、客を巻き込んだコント的なところまで、観客の喜びそうなことなら何でもやるというところはかなり徹底している。それはオリジナルでしかできないが、活気はそのオリジナルに取り組む姿勢からきているかと思う。サービス精神があり、骨惜しみしないのはいい。

 以上のようなところを評価するが、不満な点もまた多い。

 夢で竜馬になった主人公が、元気を得て、現実に立ち向かい成功するという、ありきたりとも思えるストーリーに新鮮味は薄い。

 劇中、この芝居の核である主人公が竜馬になる夢のシーンは、はじめから夢と強調されて、わかりやすいかもしれないが、夢の不可思議さを弱めているのが惜しい。夢でなかったらタイムワープだが、そうかもしれないと思わせて、無理に夢であると強調しなくてもいい。

 また夢以外の部分でリアルさが少ないことで、ズシンとくるような説得力も弱くなった。商店街の話というのに、商店主がお客をどう考えているのかわかりにくいし、商店主たちの個性の描きかたも不十分である。
 その結果、イメージが定着している歴史上の偉人に比べ、現実の人物がうまく形象されないことになった。時代劇の部分の方が俳優も生き生きとして圧倒的におもしろいのはそういう理由による。
 夢の部分をさらにファンタスティックに、現実の部分はさらにリアルにやってよかった。

 ついでに言えば、イベントに家族も来ないような商店街に未来があるとは思えないし、ショッピングモールの支店長もものわかりよすぎるし、あんなにうまくハッピーエンドでいいの?と思う。
 竜馬から教えられることと実際の行動との関係が際立つというところまでは至らない。リアルさにあまりこだわるとストーリー展開できなくなるかもしれないが、もう少し考慮してもいい。

 やや泥臭いところがこの劇団の持ち味であり、無いものねだりかもしれないが、スマートさ、切れ味のよさが加わればさらに楽しめる。そのためには、もうひとつ踏み込んだ演技ができるよう、若手の奮起が望まれる。今後の活動に期待する。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ