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《2001.8月−2》

レベル高すぎるんじゃない
【高校演劇全国大会】

5日(日) 13:00〜18:00 福岡サンパレス 無料


 全国高校文化祭の一部門として、高校演劇全国大会が福岡で開催されたので、こんなチャンスはめったにないと、初日の日曜日に観に行った。
 結果その圧倒的な迫力に、こんなに高いレベルなのかと正直言ってびっくりした。
 会場は広く、芝居をする環境としては必ずしもよくないが、演技にはその広さをものともしない力強さがあった。脚本のレベルもびっくりするほど高い。横内謙介氏が、すぐにプロでも通用するのが多いと言っていたが、それもわかるレベルだ。
 実際に会場で観た4本と、BS放送で観た3本の7本について感想をまとめる。

「アルプスの少女」(関東:麻布大学付属淵野辺高校)
 初めて観た高校演劇がこの作品で、こんなレベルなのか!すごすぎる、と唸ってしまった。スポコンものだが、暗さは全くない。女子マネージャー達が野球部を作り、甲子園出場までを描く。甲子園出場をかけたPR学園の松坂牛投手との対決では、観覧席の観衆で、野球部への思いをダイナミックに伝える。
 賞は逃したが、その野放図な明るさとテンポのよさと群集劇としての躍動感には、観るものを夢中にするだけの迫力があった。

「私場所ワタクシバショ」(近畿:大阪府大谷高校)
 黙って転校していこうとしていた友人に、夜の教室でみんなが卒業式をしてやる。それを何十年か後に再会して語り合う話で、年齢の落差を楽しめる趣向だが、あまりぴんとこなかった。

「銀河鉄道の夜への旅」(開催県:福岡県南築高校)
 福岡ではなぜか川村光夫がよく上演されるが、やや古い上に甘ったるすぎて好きではない。
 この作品は、叙情的なところをダンス等で強調しているところが評価されているが、どうもそこに魅力を見出せず、その創造性においても他の作品との差は大きいと思った。

「ぼくんち」(中国:山口県華陵高校)
 これもう〜んと唸らされるレベルだ。子供たちの遊び場を舞台に、子供たちの家庭の兄弟、親子の情愛を描いている。
 子供たちのままごとなどでの会話を通して、それぞれの家庭の状況をくっきりと浮かび上がらせる。その手法はみごとで、背後に広がるおとなの世界を想像させ、わずかに登場するおとなを接点としてこどもとおとなの世界とを強烈に結びつける。夕方、そのおとなの世界に帰っていく子供たちがいとおしくなる。
 いかにもという子供を演じる演技が楽しい。

「やっぱりパパイヤ」(関東:千葉県薬園台高校)
 BSで放送されたのを観た。優秀賞だ。
「パパイヤ」とは、「パパ、嫌!」で、親子の断絶をユーモラスに描いている。娘との接し方セミナーがそこをうまく表現していて笑わせる。
 先生の作だから親の時代ことがよくわかった上で書いており、キャシー中島の名前が出てきたりとリアリティがある。しかし演技は、それらの親世代の感覚も合わせて、高校生の側から描きなおしているところが新鮮だ。

「ばななな夜」(関東:栃木県宇都宮女子高校
 同じくBSで放送されたのを観た。これも優秀賞だ。
 夜の公園、男性がガッツポーズをとっている像の周りにうごめく女性たち。その男性像の陰部に手を当てて願い事をするとかなうといううわさがあるのだ。その絶妙のアイディアに、高校生、若い女性、老人をからめた展開で、笑わせほろりとさせる。

「七人の部長」(四国:愛媛県川之江高校)
 これもBSで放送されたのを観た。最優秀賞だ。それだけのことはある、よくできすぎているほどによくできた作品だ。  七人のクラブの部長が出席した予算配分会議で、それぞれの意見を述べあい、それぞれのクラブの状況について本音が出たり対立・反目しあったり。会話はテンポよく、実体験からくる悩みで実感がある。会議が終って帰る彼女らが、会議前とは明らかに違うところまで緻密に描かれていた。


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