簡単に言ってしまえば、頭の禿げ上がった大男が、タイツ姿にやや厚い紙で作った衣装をかたどったものを着けて、音楽(ほとんどボーカル)に合わせて行う形態模写だ。にもかかわらず、その意外性と動きのよさで大笑いしながら大いに楽しんだ。
圧倒的なのはその衣装のようなものの作りの面白さだ。さっとめくると瞬時に別の人になる。例えば、相撲取りを裏返すとフレンチカンカンに、びっくりする速さだ。 ひとつの衣装で早替りを2回くらい、だから3曲をやるが、そのあっ!と驚かすアイディアがまずすごい。
それと、演技はダイナミックな勢いだけという印象だが、むしろ小手先でどうこうでないのが気持ちいい。大音量のボーカルとは対峙することはなく、それを演技の後押しに使っている。実際、音楽がかれの背中を押しているという錯覚すら覚える。
模倣する人物を大げさに強調したダイナミックな動きは、何の憂いもなくカラッとしていて、イタリアらしい陽気さに満ちている。そのような動きと音楽があいまって、舞台が観客席まで押し寄せてくるような感じさえある。
夜9時からの公演というのに満席で、若い女性客が圧倒的に多い。