福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ
《2001.9月−5》

福永郁央の作劇法の面白さ
【サムライ、もしくはロンド(あなピグモ捕獲団)】

作・演出:福永郁央
8日(土) B面:16:00〜17:20 A面:19:00〜19:20 あじびホール A面・B面セットで2500円


 女性だけのA面と男性だけのB面を見比べると、福永郁央の作劇の特徴が表れてくるのが興味深く、面白かった。

 基本的なセリフでプロットを示して、あとはアドリブ的に俳優にまかせ脹らませている。からみで人が変わるというようなドラマが前面にでるような作りではなく、理由もなく飛ぶ場面場面の印象をつないでいくような作りだから、俳優にまかせるところが多いのだろう。
 だから、A面とB面では同じ脚本とは思えないほどできあがったものに差がある。このようなところが福永の作品にドラマ性が希薄で、鮮明なイメージを生まず、不満に思っていた(それが前作SAVANNA CHANCEの感想となった)。

 今回の作品を観てみて、そのようにフレキシビリティがある脚本のなかにも、作者のメッセージはひっそりと隠されていることがわかる。あまり書き込まず、論理ではなく印象で引っぱっていく。だから場面の印象だけが残ればいいという芝居づくりだと思う。

 サムライを捜す5人のサムライ達の武器が、ひとりさらにひとりと奪われる。武器をなくしたかれらは・・・と書いていても、両面見ているにもかかわらず場面の印象のみが残り、ストーリーはどうだったっけ?という感じだ。
 サムライたちの自己崩壊の芝居だが、5人のサムライのほかにレプンという語り部らしい役を配することで相対化し、作品の幅を広げている。

 まず男性版のB面から観た。木村のほか、客演の長岡、上瀧などすばらしいキャストだ。しかし作品の印象を一言でいうと、「重〜い」。それは、福永が示したプロットに対し各俳優が真正面から入れ込みすぎているからだ。だからどぎつさが前面に出て、それほど強くはない作品のメッセージが埋没してしまった。もう少し演技のアプローチを変えたほうがよかった。

 それに比べて、女性版のA面は全体的にはさらりとみえながら、メリハリはあり、切れ味はいい。各場面の印象は際立ったし、場面から場面への展開も軽く、見ていて心地いい。
 女性だからサムライ役に距離をおいて、自由に作り演じられたということが、結果としていい効果を生んでいるのではないかと思う。そのように各女優ともいい演技だが、特に、ほとんど演技していないようにみえる語り部・レプン役の増田陽子が清冽な印象を残す。

 このような試みは、可能性を広げる意味でもいろいろやってもらいたいと思う。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ