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《2001.9月−6》

合言葉は「しつこさ」
【ダス・ガウクラーメールヒェン (GIGA)】

作・演出:山田恵理香
15日(土) 17:30〜19:50 パピオビールーム 2000円


 こだわりにこだわったしつこさが効果をあげている作品だ。原作とその作者にこだわり、上演にあたっても俳優の演技はもちろん、音楽、装置等細部にまでしつこくこだわっている。結果、実質上演時間が2時間10分におよぶ作品になった。不満な部分はあるにせよ、そのしつこさを支える情熱が楽しめる舞台を作った。

 サーカスのうらぶれた芸人とせむしの少女が実は王子とその恋人で、かけられていた魔法を解くために闘うという物語だ。サーカスの芸人たちの話と悪の魔術師に国を奪われる王子の話というふたつの話が結びつき、悪の魔術師をやっつけて大団円となる壮大な作品だ。

 戯曲は、エンデへの思い入れもあろうが、エピローグまでを含めて、徹底的というほどよく書き込まれている。サーカス物語を読んだことはないが、原作の面白さまで彷彿とさせられるレベルだ。
 演出は、前半はスピード不足だが、後半ではなぞが解きほぐされる過程が快調に展開される。布を使った演出などの工夫で場面の印象をうまく作っているが、さらに静と動を対比させるなどのめりはりがあればさらに迫力が出てくるだろう。
 音楽は生演奏が効果的だ。ここでもしつこさは発揮され、ねちねちとからむような音作りは悪の魔術師が登場する場面で特に効果を上げている。

 俳優の演技については、エリを演じた峰尾かおりを除けば、俳優による形象化は十分ではない。俳優には軽さと切れ味がほしい。
 ダンスは、悪の魔術師の手先の踊りなどそのどぎつさが効果的だ。トップレスで踊る女優を福岡では初めて見た。
 装置は簡潔で、平舞台をうまく使っている。

 ハッピーエンドでカーテンコールまで終ったあと、何も変わらない現実の中にいるサーカスの芸人を再度登場させる。ファンタジーではないぞとばかり現実化を行うエピローグが付くことで、ハッピーエンドは相対化され、余韻は深くなった。

 強いて文句を言えば、ちらしにセンスがなく暗いのと、当日券での入場者にはチケットが渡されないこと。福岡では当日券での入場者にチケットが渡されないことがよくあるが、チケットだけを観劇の記録として保存する私としては大いに困る。善処願いたい。


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