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《2001.9月−9》

地元ネタの効用
【翼をくださいっ! (ギンギラ太陽'S)】

作・演出:大塚ムネト
22日(土) 18:00〜19:35 西鉄ホール 2500円


 スカイマークエアラインの開業後ほどなく初演された作品の再演だ。アンコール公演第2弾と銘うたれている。基本的には第1弾の「天神開拓史」と同様で、感想にもほとんど何も付け加えることがないほどだ。
 内容が変わるだけで、他はほとんど何も変わらない。内容についても、アプローチ方法はほとんど変わらない。それほど強固なスタイルが定着しているといえる。それは却って今後の展望を欠いてしまい、抜け出すのが大変ではないかという気がしないでもない。

 かぶりものと地元ネタがこの劇団の2大特徴だが、ここでは地元ネタについて見ていこう。

 開幕では、スーパーブランドシティ、ビブレ、メガバンドールとこのところ話題になっている建物が登場し、現状を嘆くが、みんな状況をよく知っていてイメージも持っているから、何を言ってもドッと沸くことになる。

 スカイマークエアラインズの開業に伴う、航空会社、新幹線、長距離バス、他の空港のてんやわんやを描いていくが、そのあたりもみんなの共通認識としてあり、航空業界への取材が生きていて裏話にも現実味があるので、相変わらず観客の反応はいい。
 しかしこの作品の真骨頂は、さらに時代を遡って軍の飛行場であった雁ノ巣飛行場、太刀洗飛行場が登場し、大戦中の様子が語られること。そして敗戦後に行われた進駐軍による旧日本軍の戦闘機を焼却するフィルムがじっくりと上映され、自前の翼を奪われてしまった戦後の日本の苦渋が浮きぼりにされていることだ。だから、その後の民間航空の誕生やYS−11の開発など日本の航空産業の発展を大きな喜びと感じることができる。

 そのような背景を踏まえた、戦後最初の日航の一番機を、スカイマークエアラインズの開業の一番機と重ね合わせることで、スカイマークエアラインズの開業の意味を強調し、スカイマークエアラインズにエールを送って終る。

 カーテンコールで大塚ムネト代表は、福岡の人にしかわからない地域限定の芝居を作り続けていくことを力説していたが、この地元の歴史を見つめた突っ込みがあるから、必ずしも登場するキャラクタの既成のイメージだけに寄りかかってばかりいない、という印象になるのかと思う。そのような硬軟とりまぜた面白さの根っこがあるから、まあこのままででいいかという気持ちもある。
 しかし翻って、作り上げたものを壊すのは大変かも知れないが、少しは冒険してワンパターンから脱出してほしいと期待する気持ちもまた強い。


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