趣向と切れ味で見せる飯島早苗・鈴木裕美のコンビに、いい原作と実力のある俳優がそろったらどうなるかということがわかる作品で、暗い強烈な話ではあるが演劇の楽しさが詰め込まれている。
その楽しさを堪能した。開幕したらノンストップの2時間50分をとても短く感じた。
どこまでもどこまでもぶっ飛んで行く凄まじいストーリー展開だ。
弁当工場で働く4人の主婦。そのひとりが夫を殺してそれを何とかしようとしたことから、主婦たちの日常がOUTしていく。そのOUTのしかたは半端ではない。
死体を解体して捨てるが、発見されてしまう。がそこはなんとか取り繕って、警察の目は佐竹という男に向かうが、佐竹は釈放される。経験が買われて彼女らは死体解体の仕事まで始める。後半は、復讐に燃える佐竹と主婦のリーダ・雅子との壮絶なバトルだ。
飯島早苗の脚本は、原作があることを感じさせないほどにこなれている。いろんな要素をうまく詰め込んでいる。
殺人に手を貸すことをきっかけに生き生きとしだすという、演出者いうところのマイ・フェア・レディ症候群や、壮絶なバトルの果ての究極の性愛など大きなテーマで印象が深い。しかしその背景となるそれぞれの家庭の人間関係や、弁当工場という職場もうまく描かれている。サラ金業から死体解体請負業に転進する男や、日系ブラジル人の男性パートなどをうまくからませる。
一寸先がどうなるかわからないサスペンス性も高い。
鈴木裕美の演出はそのハイテンポが心地いい。工場の状況と各家庭の状況から夫殺しまでリアルに表現しながらも、30分とはかからない手際のよさだ。
しかし、突っ込むところはじっくりと取り組み手加減はしない。特に大詰めの、相手を殺しても快楽にのめり込みたい佐竹と、快楽を続けるために殺されたくない雅子とのやりとりは迫力がある。
場面転換がみごとで、装置の前面をゴロゴロと書き割りが走るともう次の場面だ。舞台美術と照明が情景をうまく表現し、演出のテンポのよさを助ける。
俳優では、雅子の久世星佳のクールな雰囲気と大詰めの激情の表現がいい。全体的にはどの俳優も(ピンクの電話の竹内郁子も含め)押さえたきっちりとした演技だ。緊張を最後まで持続する。
2000年12月の初演では、久世星佳が第8回読売演劇大賞最優秀女優賞、鈴木裕美が同最優秀演出家賞と第35回紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞している。それだけのことはある作品だ。