福岡の大学演劇部の公演はいままで観たことがない。今月は福大、九産大、九大の卒業公演があり、できる限り観たいと思っている。
福岡大学演劇部98代卒業公演であるこの「found or not found」は、爽やかで可愛らしい作品に仕上がっており楽しめた。
急性白血病で死んだ賢司と彼のまわりの友人たちの話だ。
賢司と洸との山を通した友情と、賢司と蛍の恋と結婚を軸に、男女9人の仲間の日常と賢司の死によるその変化を、あまり深刻にせずうまく描いている。若者でなければ書けない会話がテンポよく語られる。全員によるダンスシーンなどがさりげなく挿入されるなどの工夫もある。
前半は楽しいばかりで他愛ないとも見える若者の日々を描くが、賢司の死がわかった後半でその日々をいとおしい日々として相対化してしまう構成はいい。
俳優はなかなか個性的な人物をていねいに演じる。一見無造作に見えるが、細かい気持ちの動きへの演技の気配りがなされている。賢司を演じる林田宏信は儲け役ではあるがなかなか魅力的だ。春子を演じる川端教子のメリハリのある演技もなかなかいい。
照明などのスタッフもテンポのいい舞台作りを助けている。
全体的には、福岡の若手劇団と比べると平均以上のレベルだと思う。じっくりと取り組んだ成果は十分に表れていた。
初日を観たが、ふくふくホールで観客は30人強というところだった。