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《2002.3月−8》

チャンバラ主体☆楽しめる娯楽劇
【黒の欠片 (九州大学演劇部)】

作・演出:上野貴史
16日(土) 14:00〜16:20 九州大学六本松キャンパス内学生会館2階大集会室 500円


 チャンバラ主体の楽しめる娯楽劇だ。
 10年前に主家の戦いで相まみえて滅んだ2派の忍び。今は、一方は主家の隠密に、他方は対立する隣国の密偵となっている。その2派の戦いと協調を描く。
 人物の関係がけっこう入り組んでいる上に、その関係も揺れ動くというけっこう複雑な構成の作品を、戯曲はうまく表現している。「人物相関図」などなくてもセリフとしぐさだけでわかるように表現しているから立派だ。

 役者たちは舞台狭しと駆け回りぶつかり合う。すべて刀での戦いで、飛び道具を一切使わないのも気持ちいい。
 ストーリーが進行するにつれて10年前の真実が明らかになる。人物の過去がわかり始めると、人物の陰影がくっきりしてくる。
 それらの人物の思いを十分に引き出していて、そのせめぎあいが次の行動を生むというストーリー展開は納得できるレベルに達していた。

 役者の層は厚い。個性的で技量も高い。擬闘シーンもなかなか決っていて見せるレベルに達していた。
 オロチ一族の烏丸を演じる木山浩平は、顔も演技も個性的すぎるくらいだ。ヒャクメ一族のイカテを演じる三重野周晃の妖刀を持ってからの演技は鬼気迫るものがあった。かってヒャクメ一族の刀鍛冶で今は城主にとってかわろうという勢いの権力の亡者・風間を中川洋一がうまく演じていた。

 それにしても卒業公演でこのボリュームとこの入れ込みには恐れ入る。そして全く理屈っぽくないのがいい。表現的には新しくはないが、ここではそれがねらいではないからよしとしよう。
 この公演は六本松の学生会館の大集会室で観た。観客は30人強というところだった。春休みでキャンパスは閑散としていた。

 福大、九産大に続ききょうの観劇で3校目だが、大学演劇の面白さを大いに楽しんだ。ともに力の入ったオリジナル作品で、貧相なところや小難しいところがなく、きちんとした構成力と高い演技力で見応えがあった。楽しんでやっているのもいい。2校がチャンバラというのも何とも面白かった。


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