中村明菜がいい。二役だが、そのいずれもをみごとに演じきっている。両方とも儲け役ではあるが。
「源八橋西詰」は、そこの場所にたたずんだ3人の人についてのオムニバス作品だ。
一人目は、殺人犯を多重人格者に仕立てて無罪にしてしまおうという詐病士(にせの病気をでっち上げる弁護士)の話。映画「39」の裏返しだ。
二人目は、所属劇団がお笑い劇団になるが、主演女優の座を守るためならプライドも捨てる女優の話。
三人目は、女の子が自作した話を聞く童話作家の話。童話作家はその話を盗作してしまう。
中村は、二人目の女優と、三人目の女の子を演じる。
二人目の女優は、ヤケクソさがよく出ている。
特筆すべきは三人目のところの女の子の役だ。女の子のする話は、憎まれた人から抱きしめられたら天国に行かせるとの約束で再び地上に降りた「かっぱミイラちゃん」という話で、「美女と野獣」や「人魚姫」のパターンだ。
「かっぱミイラちゃん」は、抱きしめてもらうために相手の歓心をかうべく自分の体を目だけを残してばらばらにしてしまうのだ。中村はその壮絶な哀切さをきっちりと演じた。
この舞台は、こんど「飛ぶ劇場」に入団した木村健二と、活動再開の渡辺琢磨のユニット「キムラタクマ」の公演だ。
「源八橋西詰」は福岡では1998年に「ギンギラ太陽'Sプロデュース公演」として、大塚ムネト、後藤香、松清貴樹の出演で上演されている。気になるのは、そのような作品を再び上演しなければならないほど戯曲ひでりなのだろうか。この戯曲に何か思い入れがあるのかもしれないかなとは思うが、単に視野が狭いだけなのじゃないかなという気もする。余計なお世話だが。
この公演はシアターポケットで20人弱の観客だった。
いつもならオリジナル作品優先だが、木村健二を見たくてこの作品を観た。池田商会「ハッピィ〜どうにかなるだろ〜」とルーズマン新人公演「サイレント・バーン」は観られなかった。残念。