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《2002.3月−11》

さすが!超一流パフォーマンス
【NANTA (PMCプロ)】

原案:Seung-Whan Song  演出:Chul-Ki Choi
21日(木) 20:00〜21:25 ソウル・NANTA劇場 30000ウォン(約3000円)


 すばらしく楽しめるパフォーマンスである。
 料理について考えられる面白いことを皆ピックアップしてきて、サムルノリのリズムに乗せこんでしまったという作品だ。そのぎりぎりまで考え抜いたアイディアと、それを表現する俳優の力によって圧倒的な迫力の舞台になっている。

 人物は、支配人、チーフコック、女性コック、セクシーガイコック、新人コックの5人。支配人から、支配人の甥の新人コックを教育しながら1時間で結婚披露宴の料理つくりを命ぜられたコックたちの奮闘ぶりを徹底的に見せる。
 はじめは静かに打楽器の演奏と神への祈りから入るが、料理シーンが始まるや超ハイテンポに繰り出される趣向に息つく暇もないほどだ。

 包丁や鍋を使ったリズムが基調にあるが、その形は例えば左右と後ろの三つの太鼓をたたく「三鼓舞」などまで取り入れられてい多様性を持たせている。単にリズムの多様性のみならず、サーカスに近いアクロバットなどもあり楽しめるが、果ては観客を舞台に上げてパフォーマンスに参加させる。それでもテンションは落ちないからみごとだ。
 観客を2人づつ各チームに入れる「餃子積みくらべ」では、途中からメインの俳優は袖に引っ込んでしまう。しばらくの間、舞台に上がった観客だけで舞台をもたせる。俳優に去られた観客の戸惑いがおもしろい。

 作品の特徴はセンチメンタルの排除だ。じつにさばさばしていて、人物の関係についても変に馴れあわないのがいい。それを徹底的にやっているから世界レベルの作品ができるのだろうと思う。日本にはまだ2000ステージ以上をこなし世界ツアーをやるようなオリジナル作品はない。映画でいえば、「シュリ」と長瀬智也主演の「ソウル」との違いだ。
 鈴木忠志や大田省吾の舞台はかみそりのようにその切れ味は鋭く、オリジナリティのレベルは高いが大衆性とは遠い。「NANTA」は、切れ味のいい鉈のようなボリュームとパワーにあふれた作品だから大衆性を獲得できたのではないかという気がする。

 とてもハードな舞台だし、世界ツアーなどあることから上演チームは5チームで編成されている。チームによってはダブルキャストを組んでいる役もある。今回観たのは「Red Team」だった。
 会場は300席強で、客席は階段状で見やすい。鍋のなかの料理のにおいが漂ってくるという舞台との近さだ。熱気がこもるくらいのいい広さの劇場だと思う。

 21日から3日間、ソウルに来ている。ミュージカル公演などの情報は「ソウルナビ」などのサイトで日本でも簡単に得られるが、今回は家族旅行ということもあり単独行動がしにくいので、ごく一般的な「NANTA」と「韓国伝統芸能」の公演を観ることにした。
 「NANTA」は日本での上演も多いがいままで観たことがなかった。5月には福岡での公演も予定されている。


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