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《2002.7月−6》

半分☆化けた
【俺たちは天使じゃない (ドリームカンパニー)】

脚本:徳満亮一 演出:佐藤浩史 松井和子
12日(金) 19:00〜21:15 西鉄ホール 招待


 本格的な演出家を得てドリームカンパニーは化けるのではないかという期待があった。
 この舞台を観て、半分化けたかなという印象を持った。脚本はていねいで成功しており、演出はキャスト・スタッフの才能を紡ぎだし統合していてその効果は大きい。
 まだまだ課題が多いにしろ、大きな変換点を通過したことは間違いないようだ。

 脚本は、原作映画のよさをミュージカルとしてもうまく引っぱり出していていい。もともと荒唐無稽な話ではあるが、その陰影のある部分を人の思いにまで踏み込んでいる。
 南の島・カイエンヌでのクリスマス、3人の囚人が雑貨商の一家を助ける話だ。なかなかドライとも見えるすっとぼけたストーリーではあるが、細かいエピソードまでをていねいに描いていて説得力をもたせている。歌詞の切れ味もいい。

 演出は、全体が勝手にふくらんで暴走するのを押さえて、じっくりと表現することを徹底的に要求しているように見えた。キャスティングも劇団員序列ではなくて個性でなされており、脇にまわった石村昌子はじめ各俳優がその持ち味をよく発揮していた。
 その結果、演技は大味さ、不自然さがかなり改善されていた。
 音楽も、振付けも前回公演よりずいぶんよくなった。同じような曲想や振付けが減り、各ナンバーにメリハリが出てきた。
 ただし、演出のとどいたところとそうでないところでは舞台の仕上がりにムラがあるように思える。

 今回の公演でいいところが目立ってきたために却って欠点も際立ち、取り組むべき課題もはっきりしてきたように思う。全体としては更にダイナミックさがほしい。
 音楽、振付けについては、よくなってきたとはいえまだまだ課題の方が多い。
 音楽については、曲はまだ中途半端な甘さが残っており、メロディにもリズムにももっと極端をねらって思い切った趣向があってもいい。
 振付けも音楽と同様に、やや陳腐で斬新さがなくここにも思い切った趣向がほしい。

 演出のよさによって形を保ってはいるが、演技についても課題は多い。
 舞台がびしりと決らないのは、甘い動き、よけいな動きが多すぎるからだと思う。安定しない発声や、決らないダンスで洗練度はいまひとつだ。
 歌もよくなったとはいえまだまだ下手で、聴いて心地よくなるレベルにはない。曲がダイナミックになったらちょっと着いていけないだろう。じっくりと聴かせる術も要る。
 本格的なミュージカル作品をめざすなら、これらのことは避けては通れないはずだ。

 気になったのはマイクと衣裳だ。
 マイクはONするのは歌のところだけでいいのではないか。その歌のところもボリュームが大きすぎてかなり不自然だった。工夫の余地がある。
 衣裳については、可愛くて派手なものが多すぎてセンス抜群とはいっていない。ゴテゴテの印象になる。きれいで可愛くないとミュージカルの衣裳ではないという思い込みがあるような気がする。

 そう何もかも一挙にレベルアップを期待してもしょうがないかもしれない。オリジナルであることを考えるとむしろ、よくぞここまでやったといえる。
 あまり細かいことを気にしてこの劇団の持ち味であるおおらかさがなくなっても困る。おおらかのままにさらに練り上げていい作品にしてほしいし、この作品を超える次回作を期待する。
 初日を観たが、6割ほどの入りだった。


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