大変面白い。このところの福岡の劇団の公演のなかではその面白さはずば抜けていて、大いに楽しんだ。
内容は、PA!ZOO!!版「ラヂオの時間」だが、「ラヂオの時間」よりぶっ飛んでいる。いかにもありそうな状況設定は、ラジオの現場を知っている人が書いてこその説得力だという気がする。
人物の個性も十分に描けていて、セリフもピリリとしていて、俳優の表現力も高い。完成度はいちだんと向上した。あまりしつこく突っ込まないというこの劇団の性向もあり、人物の思いが少しばかり浅いためにやや小粒な印象になったのは惜しい。
ラジオ生放送で、恋に悩む女性パーソナリティがDJを拒否、替わって清掃のおばさんたちが番組を進めるという話。3人の清掃のおばさんたちに、パーソナリティ、女性ディレクター、女性AD、さらにおばさんのひとり加藤さんのダンナがからんでストーリーが進む。
開演したら最後までの90分間、暗転なしのリアルタイムでグングンと引っぱる。エピソードの組み合わせなど作劇的なレベルは高い。
演出もデテールまでをていねいに描いている。
生放送番組は視聴者からの悩み事相談がメインの番組で、清掃のおばさんたちの「自分で考えろ!」などという本音のやりとりが状況を変えていくのが納得できるていねいさだ。それを、人の出入りの手際のよさやメリハリのあるセリフでテンポよく進める。
演技のレベルも高い。
押さえた演技を一度通りこしたうえでやや極端に強調すべきところを強調しているように見える。それがポンポンと飛び跳ねるような軽さにまで達しているのがいい。人物の表現にあたっても、痒いところに手が届くようにクッキリといかにもそれらしく人物の個性を浮かび上がらせた。
もともと地力のあるこの劇団だが、自分のやり方にしつこくこだわり続けて独自のスタイル追求して高いレベルにまで到達した、と感じた。その演劇センスは福岡随一だと思う。
こんなレベルでしかも入場料は廉いのになぜか空席が目立った。チラシをわかりやすくするなど、もっと一般客を増やすようなPRをしてもらった方がいいような気がする。