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《2002.7月−10》

ミュージカルの楽しさ◇あふれる
【マイ・フェア・レディ (東宝・博多座)】

脚本:アラン・ジェイ・ラーナー 演出:西川信廣
20日(土) 18:00〜20:20 博多座 4200円


 よく知られたミュージカル作品だが、演出がていねいに叙情的なところを強調していて、いかにも日本的な東宝ミュージカルらしい舞台になっていた。どんどん引っぱっていくパワーはあるので、どっぷりとつかりこんでたっぷりのボリュームを楽しんだ。

 名作だけあって台本のよさは言を俟たない。ダイナミックなナンバー、派手な衣裳とミュージカルの楽しさがいっぱいだ。
 この作品、どちらかと言うと後半をじっくりと強調していて、ややお涙頂戴ではあるが、すれちがうもどかしさを通して、イライザとヒギンズのいとおしい思いが溢れ出す過程ををうまく描いている。
 前半はヒギンズが言葉を教えることでイライザの隠れた本質を引き出し、後半はイライザが心にこだわることでヒギンズの隠れた本質を引き出す話だと概括できよう。言葉と心の関係をうまく提示している。

 全体が必ずしも高いレベルで維持されているわけではないが、見せるべきところはきちんと表現されている。競馬場のシーンはイライザの中途半端な洗練度合いが新鮮と映って楽しい。大地真央のきれいさが際立つ。
 歌はどれもいいが、なかでも尾藤イサオが聴かせる。

 演出や演技の若干の甘さは東宝ミュージカルの特徴だが、やや気になるところもあった。
 イライザははじめからきれいなメイクだし、言葉もわざわざ汚くしているのが透けて見えて、こんな花売りいるの?というほどスマートだ。それは、変わった!というインパクトを弱めた。
 練習ことばの「スペインでは〜」についてはこれがなぜ練習ことばなのかわからないのは直訳だからだろう。日本語らしい練習ことばのほうがたぶん楽しく説得力があると思う。

 生演奏なのはいい。
 3階席の中央付近だったが見やすかった。満席で立ち見も出ていた。


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