脚本がいい。10人という登場人物それぞれの個性をうまく配していて、単純な娯楽劇と見せながら若干の社会性も持たせて、生き生きとした楽しめる作品にしている。
なぜか地図にも載っておらずなぜか住民が女ばかりの伝説の村・天語村に、村おこし企画会社の男、地質調査の男2人、水質調査の女が来る。村おこしをみんなで進めていくうちに、この村で戦争中に毒ガスが作られていたことがわかる。
純友秋久がストーリーテラーとしての力をみせた作品だ。
その脚本、書き込みすぎかと思えるほどていねいに書き込まれていて、ストーリー展開はわかりすぎるほどだ。会話で人物の気持ちが変わり、それでストーリーが変わるのが手にとるようにわかる。例えば、全員村を出ていくことにして荷物の積み込みさえ済んでいるのに、1人を除いて村に残るほうに変わるのだか、その過程をすべてそのまま会話で観客にも提示していて納得させられる。
加えて、個性をくっきりさせるための「おねしょ」や「大阪弁」などの人物の属性もやややりすぎかなと思えるくらい使われていて、人物をわかりやすく親しみやすくしている。
話は、神話の世界から帝国陸軍の毒ガス製造とそれによる汚染の話へと、社会派ドラマ風になるが深刻にはしていない。うまいエンディングまでややまとまりすぎかなという気はするが。
人物の扱いにあまり差をつけずそれぞれの個性と思いをうまく出している。演じる俳優は、天語姉妹を演じる松尾優夏と高原京子、水質調査にきた徳大寺さくら役の清水さなえの演技が魅力的だ。
装置と衣裳がいい。
装置は、ご神体丸出しの天語神社とその背後の竹林と、神社前広場の一隅の娯楽所が作られていて、リアルなのにやや神秘的とうまく雰囲気を出している。
衣裳はそのセンスもさることながら、場面ごとに変えるというきめ細かさだ。
こんな風にずいぶん楽しんだのになぜか6割くらいの入りだ。作品の質と観客数とがリンクしなさ過ぎの傾向がこのごろ強すぎるかなという気がする。それは一般観客の層があまりに薄すぎるのが原因ではないかと考える。