宇宙幻想曲第2作のこの作品は思いがけず楽しめた。でも、「どこがどんな風に?」といわれると、どう面白かったのか説明するのに四苦八苦だ。
面白かった理由については少しはわかる。元ネタがわかりやすかったのだ。
アポロ13や少年マンガ誌のバトルというよく知っていることがベースになっていて、「月に向かうアポロ13」や「アニメで変質する少年マンガ誌」という展開がとられてもまあついていける。
ヒイラギとその2つの分身の3人の男性と、カエデ、クヌギ、ツバキの3人の女性で演じられる。
アポロ13の世界と物語を作る作家の世界が、例によってあまり境目がはっきりしないというスタイルで提示される。ただこの作品については各シーンにはイメージが凝縮されていて印象が際立っていたシーンが多かった。
俳優は皆すっきりと演じていて納得した演技と見えたのは、ややわかりやすかったと思えた故か。
60分を過ぎたころ猛烈な睡魔に襲われた。福永の詐術にひっかかったのかと思えた。こっちだってその睡魔さえも楽しんでしまえとばかり舞台に身をまかせた。睡魔の先に「ウソばかりのハッピーエンド」が見えたような気がした。
そこまで引っぱりこんでしまうテクニカル面でのレベルの高さは、前回の「Re:”Hello-Hello”」の感想で書いたとおりだ。
「DEAREST みなさま」と題して書かれた作・演出の福永のメッセージに、自らの芝居の分析とこれからへの覚悟が語られていて読ませる。
「役者も一番、戯曲も一番、スタッフもとよくばっていたらすべてはみごとに崩壊しました。でもね、そこに、あーキレイだなと思える最低な世界が待っていました。」、「もしかしたら、いつまでも、僕はオモチャ箱をひっくり返し続けるのかもしれない。」と福永は書いている。
ここはそのまま素直にとってみると、そうだったのか!と思えるところも多かった。
それにしてもわずか3ステージなのに、おまけに私の観たのは土曜日のソアレのラストのステージなのに空席がめだった。観客は若い演劇人ばかりのように見えた。たぶん私が最年長だったのではないかと思う。