ストーリーは破天荒だが、ドラマは意図的に排除されたという芝居だ。枝葉が刈り込まれたためにストーリーがわかりやすくなったのがいままでの作品からの変化だ。だから、ドラマが意図的に排除された作りであることにも気がついた。
これまでに観た2本のバカダミアンの作品に比べると圧倒的にわかりやすい。
これまでの作品は、ポンポンと高速で飛び出してくる言葉がまるでコルク弾の散弾を浴びているようで、どこに焦点をあわせていいかわからなかった。
この作品は、それらの猥雑ともいえる枝葉がある程度刈り込まれていて、ストーリーがより明確になっていて、その分わかりやすくなった。
ペルーの むっつりダンディ が、王朝の末裔であった妻が遺した巨大ロボで、スペインはおろかヨーロッパ全土を殲滅してリベンジを果たすというストーリーだ。
むっつりダンディ の1役だけで展開するひとり芝居だが、駄じゃれやもじりが飛び出してくるスピードは今回はずいぶん落ちた。しかし、跳んだりはねたりひっくり返ったりは相変わらずだ。
娘がスペイン人に拉致されて、取り戻すためにスペインに乗り込んで巨大ロボでヨーロッパを殲滅するのだが、その苦難や、苦難のあとの娘とのうるわしい再会などというドラマを強調することを拒否していて、終わったら「娘はどうなったんだっけ?」という感じだ。それはそれで面白い。
しかし何ともすっきりしていて物足りず、せめてもう少し枝葉を充実してよ!とこれまでの作品の感想と反対の意見を言いたくなる。観客なんぞ身勝手でいい気なものだと自分でも思う。でもここは枝葉の量よりも質を上げてほしいと言いたいのだ。
あまりワンパターンなら次回から観るのをやめようと思っていたが、今回は変化が見えてきた。そうでないと面白くない。
きょうの初日は最前列などに空席が目立った。観客は例によって演劇関係者ばかりと見えた。