劇団バキューンカンパニーの旗揚げ公演であるこの作品は、若い感性に溢れた軽く生き生きとした舞台で楽しめた。若い観客で満員の客席を大いに沸かせた。
この世のハジメ(女)に拾われた テンノ(男)は、計らずの鍵屋(男)のプロデュースで王(ショーワテンノ)になる。戦争をはじめてそして敗戦。用済みの テンノ は 計らずの鍵屋 によって殺されるが、しかし平和な時代にも王が必要と悟った 計らずの鍵屋 は ヘイセイテンノ を立て、秘密を知る この世のハジメ を殺す。
天皇制の百年をなぞるようなストーリーは重苦しそうだが、舞台の雰囲気は全く逆で、軽いユーモアとテンポで見せる。
この世のハジメ(過去)=婆(現在)、計らずの鍵屋(過去)=老プロデューサー(現在)の、過去と現在を別の俳優が演じて、時間の重層性をうまく出した。過去が現在に追いつくというのも面白い。
連発されるギャグをはじめ、観客を乗せるための多くの工夫がされている。観客を引っぱっていくとみせかけてうっちゃるといういなしが多用されるが、俳優のすっとぼけた演技でうまくはまっている。相手の会話を外したり、タイミングをずらしたりといった工夫に加え、ダンスシーンがあったりとサービス精神もたっぷりだ。
敗戦から戦後のシーンで演技のバックに延々と「終戦詔書」(玉音放送)を流す。テンノ の死のシーンの音楽が フレンチカンカン だったり、蛍の光 のテンポを速めて軍歌にしてしまうなど気が利いている。そのように、アイディアを集めて詰め込んでいる。
この劇団はメインのメンバーが18歳前後という若さだ。高校演劇の仲間が立ち上げた劇団で、座長の島内講輔は昨年8月の全国高文祭の演劇部門(その時の感想は2001年8月のところに掲載している)の実行委員長をつとめたという。
生きのいい劇団が出てきた。これからが楽しみだ。