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《2002.8月−13》

つかこうへいもどきも◇あるょ
【ロマンス2 沖縄・雨の蝋人形館 (北区つかこうへい劇団)】

作・演出:つかこうへい
23日(金) 18:00〜20:10 西鉄ホール 5500円


 確かにつかこうへいの芝居ではあるが、つからしくないところも目立った舞台だった。ワクワクしながら出かけた割には全面的には乗れず、意外に眠たかった。

 国体に出場した選手失踪事件を背景に、国体の水泳で優勝を争う花村と青木と、それに相似形をなすようにメキシコオリンピック水泳代表のトロイと川谷がからむ。その2組のホモを軸に、事件を追う女性刑事が絡んで進展する。
 すべては沖縄での放火が原因で、刑事と見せた女が犯人で、犯人と見せた川谷が刑事だった、と突然くるりとリバースする。その放火は、女の父トロイがベトナム戦争体験の結果引き起こされたものだった。
 主要な人物以外の人物も多彩で、それらの人物のエピソードをうまく絡ませながら話を膨らませている。

 競泳パンツだけの若い男の裸の乱舞にクラクラする。裸のままで男どうしの恋がしつこくたっぷりと演じられる。
 しつこさはいかにもつからしく尋常ではない。花村と青木の二人だけで繰りひろげられるホモシーンは、分かりあったかと思うと別の本音が現れるという形を繰り返しながらほとんど別の状況までもっていくというスパイラルアップなやり方で、人物の真情を引っぱり出す。しかしどうもメリハリはいまひとつで、それが眠かった理由だ。
 二人の関係を変転させながら積み上げた入れ込んだ状況全体をあっさりと否定してしまうという展開もとる。そのように足場が揺らぎ真実が小気味よく転移するのをきちんと決めてこその快感だが、この作品については「実は実は」が終盤に集中していて切れ味も悪く、また本筋と見えるホモの話と結びつかないところがつらい。

 オープニングのダンスから始まって、ダイナミックな照明とダンスとつからしいド派手な芝居そのもので心地よさはあるが、切れ味がやや鈍くド派手なシーンとしつこく会話で迫るシーンがピシリと際立つところまでは行っていない。
 結局、気持ちよく決らないことで衝撃が弱く、それがもどきと見える理由だ。

 大阪公演より会場が狭い分入場料が高いのはやむを得ないとしても、内田有紀とか牧瀬里穂ならいざ知らず岩崎ひろみクラスで入場料が上がったんではうんざり。空席が目立った。


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