昇太の新作と古典それぞれの魅力がいっぱいだし、ゲストの三増紋之助の曲独楽も楽しかった。二つ目の春風亭柳太郎の堅実な落語も併せ全体の構成がなかなかよくて満足した。
昇太の新作は「ノンアルコールの宴会」(題名はあるんだろうけどわからない)。
明るいローズピンクの羽織で登場。まくらというよりも漫談という感じだが海外旅行風景から入る。自宅に戻って寝転がるところを座布団の上にほんとに寝転がるのが面白い。
「ノンアルコールの宴会」は好きなもので宴会しようとそれぞれの好きなものを会費4000円分買ってくる。ケーキ好きの課長がはじめの2個まではおいしそうに食べ、あとだんだん苦痛になってくるのをうまく演じる。結局他人に押しつけるので酒の宴会とおんなじになってしまう、というのが落ち。
古典は、「壷算」。
明るい若緑色の羽織で登場。まくらは師匠の話など15分くらいもやり、座布団の上で「タマちゃん」の形態模写までやってしまう。
「壷算」は買い物での数字のトリックの話。買い物上手の留さんが頼まれて一緒に壷を買いに行く。二荷の壷が欲しいところを、留さんは三円五十銭の一荷の壷を三円に値切って買い、今度は二荷の壷を買うから一荷の壷を下取ってくれと頼み、二荷を六円で買う。「さっき払った三円と、下取る壷が三円だから六円になるだろう」と言って二荷の壷を結局三円で買ってしまう。
店の主人が、計算は合うがどうも可変しいと混乱して徐々に焦りだしやけくそになるところをていねいに演じ、客席までイライラが伝わってくる。
三増紋之助の曲独楽は、扇子の上で回したり輪くぐりをさせたり、立てた棒の上で独楽を心棒が水平になって回す風車、綱渡りといろんなものの上で独楽をまわす。日本刀の刃渡りなど見せる。客席は沸きに沸いた。
二つ目の柳太郎はケチの大店の主人の後継者選びの話。長男は派手好き、次男は遊び人、三男はケチ。資質を見極めようと「自分が死んだら葬式をどう仕切るのか」という課題に三人三様のやり方で笑わせる。柳太郎の落語はやや硬質なきちんとした落語だ。
この公演は福岡音楽文化協会の主催。観客は年配者が多い。6割くらいの入りだった。