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《2002.9月−5》

構成がよければ○もっといい
【金メダルへのターン (クレイジーボーイズ)】

作・演出:こすぎきょうへい
14日(土) 14:00〜15:40 ぽんプラザホール 1200円


 6月に観られなかった クレイジーボーイズ のこの新作の追加公演をぽんプラザホールで観た。
 ていねいで質の高い舞台で楽しめた。しかし若干の課題もあるような気がする。

 狭く汚いアパートの一室に同居する二人の中年男。なぜか中学入試の勉強をしている。そこに転がりこむもうひとりの男。転がりこんできた男は、勉強をことごとく邪魔しようとする。それにもうひとり女性の大家がからむ。
 かれらの関係はどうなんだろうという興味は引くが説明も伏線もなく、状況はよくわからず勝手に動いていくような感じで進む。

 場面転換のテンポがいい。
 暗転で運ぶ各シーンは5分から長くても10分くらいで、心地よいテンポの会話と心地よい場面転換でだれることはない。ストーリーよりも各場面の俳優の演技を楽しむような作りだ。
 俳優はガラリガラリと変わっていく状況をきちんと感じ取れるレベルで演じている。丁々発止のやりとりには見応えがある。特に、気弱から強面までと幅広い演技が要求される転がりこんできた男を演じる フルーティたけし が、変り身を切れ味よく見せる。

 せっかくそこまでやりながらいちばん肝心のところが抜けているように感じるのはなぜだろう。それは全体構成のいびつさのためではないかと思う。謎解きが最後に集中しすぎているのだ。
 男たちは子どもが交通事故で死んだのが原因で社会からも家庭からもスピンアウトする。子どもが乗っていたバスを運転していて自身も死んでしまった運転手が、大家の夫だった。
 子どもを追いかけて死ぬための中学入試の勉強で、それをやめさせるため大家が弟を使って邪魔をしていた、というのが終幕近くになってわかる。最後にバタバタと大きな方向転換で、これはけっこうつらい。わからないよりはマシというくらいか。
 状況を作り出したきっかけも弱い。なぜ死んだ子どもと交流するために中学入試の勉強なのだろう。そのようにやや突飛なところがじっくりとした感慨を拒んでいるのが惜しい。

 追加公演はきょうの昼・夜の2回公演で、昼の部を観たが4割くらいの入りだった。


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