構成がよくて、コントなど散りばめられたアイデァもよくて楽しめた。
この作品は、九州芸工大演劇部を中心に結成された劇団712室の旗揚げ公演である。
何をやってもうまくいかないトガシは、フィアンセ・ナツコが不治の病と聞いて自殺を企てる。仏様に尋ねると、ナツコの不治の病を治すためにはその原因である前世の罪を償うことが必要で、翌朝までに5人の命を助ければナツコは助かる、という。よくあるパターンだ。
しかしその展開にあたっては、仏様がゲイだったり、コンビニ店長と警察官のやりとりがコント仕立てだったりと、ばかばかしいところで笑えた。大型バイクが舞台に登場したりする。
トガシは仏様がくれた翌日の新聞をもとに、寺の住職、教師、コンビニ店長、企業を告発する女子大生 を助ける。しかし本人は殺し屋に追いつめられて弾丸をよけそこねてビルの屋上から転落してしまう。
仏様が登場して、試練はトガシ本人のためだと言うから生きつづけるかと思いきや、トガシは死んでしまう。
装置は右手奥に高さ1メートルくらいの台があって下手側が階段状になっている。正面の高いところにスクリーン。あとは黒い幕と黒い板。出番がない俳優たちは客席の両側に並べた椅子に舞台に向かって座っている。
それほど手が込んでいるわけではないが、この装置と照明と、客席からしゃべる俳優たちと、けっこう新鮮だ。
俳優の動きはいい。すっきりとしたしゃべりとあいまってうまく決める。軽くテンポがいいが、すっきりしすぎていて淡白なのがすこし物足りないくらいだ。
この公演は3ステージで、私の観た回は20人くらいの観客だった。