勘九郎、橋之助、福助による四谷怪談は、戸板返しや提灯抜けはむろん勘九郎の早替わりなども加えけれんを強調した舞台だ。上演時間から考えて何もかもというわけにはいかないから、人間ドラマの面が弱くなってしまったのはしかたないか。
序幕の三場は全体的に淡白で、ストーリーを追っかけているという感じだ。
二幕目ではお岩が変貌していく様をじっくりと描く髪梳き見せる。伊右衛門が亡霊のしわざで間違って新妻と舅を殺すシーンはこれまた淡白。
勘九郎はお岩、与茂七、小平の三役だが、なぜ小平の役までやっているのか戸板返しまで行ってやっとわかった。自分でもけっこう鈍いなと思うが、それは戸板返しの早替わりを見せるためだ。お岩から小平へ一瞬の早替わりにはびっくりしてしまう。
三角屋敷の場が省略されていて、人間模様は思い切り切って捨てられていた。ストーリーは解説者・鶴吉によって語られる。大詰めが取ってつけたようになるのはまあしかたがないか。
昼の部に引き続いての立見でどうなることやらと心配したが、休憩時間が長いこともあって何とかもてた。土壇場にならないと劇場に駆けつけないクセのためにきつい目をみてしまった。ただ立見は3150円とC席や一幕見よりも圧倒的に入場料が安いのは助かる。