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《2002.10月−2》

作りが◆甘いよね
【筑前亀門烈伝 〜烽山に立ち日輪を臨む〜 (ショーマンシップ)】

作:生田晃二 演出:仲谷一志
4日(金) 19:05〜20:40 甘棠館Show劇場 2500円


 観客を楽しませようという意欲はあっても、作りの甘さから空回りという感じになってしまった。
 第二回甘棠館まつり記念のこの公演は、亀井学の系譜を追いかけるシリーズの2回目の公演だが、全体に類型的で不満の多い舞台だった。

 亀井南冥の子・昭陽の烽火台勤めの顛末を描く。
 甘棠館が取り潰されて下級武士となった昭陽は、烽火台勤めをさせられる。昭陽を貶めようとする人たちや助けてくれる弟子たちとのやりとりを経て、その勤めを果たす姿を描く。昭陽は硬くてええかっこしいで人間的魅力には乏しい。

 類型的な人物が類型的なストーリーを構成するといった脚本だ。セリフも魅力に欠ける。
 黒田藩の意向を受けた仁左衛門の昭陽いじめが基本となる。同僚の下級武士の妻などを配してストーリーの幅を広げてはいるが、人物にはそれらしい存在感が弱い。
 セリフがポイントを外している。だから、当時の黒田藩や日本の状況が浮かび上がらない。ドラマチックに盛り上げようとする気ばかりが先に立ってしまっていて、掘り下げが足りない。

 演出の工夫は、舞台転換のための装置の工夫などに現れて効果をあげてはいるが、肝心の人間の描写が弱い。「ためる」ということをしない演出でなんとも一本調子だ。
 逃げ帰った利八が愛妻おはつと会うシーンの何たるつまらなさ。すーっと入ってくる利八にあまりに平然としたおはつと、サッサッサッサと先を急いでしまうのはなぜ?テンポもへったくれもない。もっとやりようがあるだろう。
 利八がおはつに「逃げよう!」と言うが、下級武士とはいえそんなに簡単に脱藩できるとは思えない。うそっぽくて、甘いと見える理由だ。

 俳優の演技も、切れ味の悪さにかっこつけが紛れ込んでいてピリリとしない。悪役・仁左衛門(田中浩之)にむしろ存在感がある。

 私の性向からいえば以上のようにやや批判的にならざるを得ないが、そのような甘さを徹底していくという方法もあろう。利八とおはつの恋情を叙情的にじっくりと引っぱるというような手だってある。
 この公演はこの劇団の本拠の甘棠館Show劇場で4日間、私の観た2日目はかなり空席が目立った。


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