*** 推 敲 中 ***
朴成煕のパンソリはつややかで骨太でメリハリもあってなかなか楽しめた。ただ、パンソリらしい情念がやや弱いのは若い歌い手だからしかたないか。実際にパンソリを歌っている時間の短さも不満だ。もっとたっぷり聴きたい。
2部構成で、第1部(約50分)ではパンソリを3曲。
「短歌 四季歌」は、7分ほどの短い歌。
「水宮歌」は、動物が出てくる寓話劇で、肝を取るために竜宮に連れてこられた兎が奸智を使って逃げ帰る話で、約15分の上演時間。しぐさはほとんどなく、声の調子だけがたよりだが、文字どおり外国音楽で、聴いてストーリーがわかることはない。
「沈清歌」は、盲目の沈学圭と妻・郭氏との間にできた子・沈清の物語で、妻の死後沈沈学圭が娘のためにもらい乳をするくだりまで。「恨」が息づいた哀切極まりない美しさというが、そうは感じられなかった。20分弱。
やはり言葉がわからないのはつらい。ストーリーを事前に聞いているとはいえ、声の調子だけで理解しようというのは無理だ。節は朝鮮語と分かちがたく結びついているだろうから日本語訳で歌うのは困難だろうし、字幕でもニュアンスは伝わりにくいと思うから、これはしかたないか。
朴成煕のパンソリは勢いがあって心地いいけれど、情感の表現は弱いような気がした。「恨」が息づいていたとは思えない。
1984年に「小沢昭一の放浪芸レポート'84」で孔玉振のパンソリを聴いたことがある。その時にパンソリの表現の深さ強さがインプットされてしまった。それに比べるといかにも青いというのはいたしかたない。20年から40年も修行を積まないとほんとうには歌えないというから、朴成煕はまだ発展途上ということだろう。
第2部は観客と韓国民謡による交流。トークはそれなりだが、密度が薄いのが不満だ。
この公演は日韓国民交流年とエルガーラホール開館5周年を記念した公演で1ステージのみ。若干空席がある程度だった。