*** 推 敲 中 ***
「SAKURA前戦」得意のチャンバラを初めて見たが、うまい構成を満たすようにチャンバラが効果的に使われていて楽しめた。
工夫が多くて魅力的な舞台である。若干の甘さと粗っぽさはまあしかたないか。
タイムワープものである。
日本オオカミを探しに行った兄妹が幕末にワープしてしまうという発想はありきたりとも言えるが、そこにいろいろ詰め込んで滅びいくものの美学を描いている。
はじめにワープした兄は、試衛館道場に拾われ新撰組の八番組長・藤堂平助となる。遅れてワープした妹は一番組長・沖田総司の配下に入る。このふたりによって、芹沢鴨の暗殺から伏見への撤退までの新撰組の興亡が語られる。
厳しい規律の下に団結した最後の武士団ともいうべき新撰組と、絶滅したといわれる孤高の日本オオカミの姿を重ね合わせる。
脚本と演出はツボを押さえていて安心して見ていられる。チャンバラをはじめダイナミックな動きもいい。さらにわかりやすいキャラメルボックスという感じだ。
脚本は観客の想像力を信じていて、よけいなセリフがなくすっきりしている。うまく配された人物の個性と思いと移ろいをよく表現した、きちんとした構成だ。
兄・藤堂平助は最後は殺されて現代には戻れない。全体を甘ったるい夢などどせず逃げていないのはいい。
現代社会においては、表に見える形で命をかけて戦うことはほとんどない。
この劇団がチャンバラを使うのは、そのダイナミックさで楽しさをアピールできるのもさることながら、命を賭けた状況を端的に表現できるからではないかと思う。しかしドラマ的にはチャンバラに逃げ込んで深まらない部分もあるような気がする。甘いと見える理由だ。
この舞台は、スカラエスパシオに舞台と約280席の客席を作っての7ステージ。若干空席があった。