福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2002.10月−9》

しつこさが勝った◇舞台
【PRIME (獅子王)】

作・演出:半田和則
13日(日) 18:00〜19:40 ぽんプラザホール 1200円


*** 推 敲 中 ***

 欠点だらけではあるが、何かよくわからないパワーに引きずられて見せられてしまう。
 状況設定、脚本の構成、ストーリー、俳優の演技などいいとはいえないのに、しつこさが勝ったという舞台だ。

 恋愛ものだ。
 自殺場所の下見に来た男と女がはちあわせする。女の死ぬ前のセックス願望に男がつきあうことになる。そこでふたりの過去が引っぱり出される。

 前半はまだるっこい。
 25歳でのはじめての失恋で自殺しようというにしては、とてもそんな切迫感はない。よけいな話の軽口ばかりでいっこうに進まない会話に、観ているのがアホらしくなるというレベルだ。しかも、「こいつら最後にはくっつくな」というのは状況がわかった時点ですぐにわかってしまうという底の浅さだ。自意識過剰の勘違い女と中途半端な男とで、人物の魅力にも乏しく感情移入拒否だ。

 後半は、女をその気にさせる催眠術などの手管を使って、やっと女の本音が見えてくる。そのときすでに開幕から1時間が経過。
 結局女は初めてのデートで場所を間違えて恋人にしたい男と会えなかった、というのがわかる。それにしても「それくらいで死ぬか!」だよ、説得力ないぜ。
 そこを無理やりもっていく。男はコスプレフリークで、入れ混じる回想シーンにコスプレが色っぽく登場。徐々にセックスに近づく二人の関係を後押しするような形だ。
 それにしても、男がわざわざ呼び出した(どうやって電話番号を知ったんだろう?)女のデートの相手と女とは、抱き合いはしてもセックスまでは至らず――と何とも中途半端なのははじめから結末が決っているためか。都合よすぎじゃない?
 しかしまあ、ふたりの心の通い合いがあまりはっきりしないまま無理やり結末にもっていくという感じは否めないが、いろいろしつこく工夫している分で何とか興味を繋ぎとめる。

 この劇団は日田の劇団で、福岡では初めての公演となる。3ステージで、私の観た最終ステージは20人弱の観客だった。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ