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《2002.11月−1》

きちんとした舞台だけに☆甘さが惜しい
【カスケード −BEANBAG×3− (空想童子)】

作:いけうちしん 演出:増本恵美
2日(土) 16:00〜17:25 大野城まどかぴあ小ホール 4本通し4400円


*** 推 敲 中 ***

 若干の甘さは残るが、魅力的な舞台である。さりげなさとわざとらしさが同居した少し不思議な雰囲気がいい。
 この作品は初演のとき最後の20分しか見られなかったが、静かな演劇の舞台の雰囲気を感じた。今回全部観てみて、必ずしも静かな演劇らしいさりげなさばかりではないと思った。そのような一見筆が滑ったと見えるような部分こそががこの舞台の甘さだと思う。それがなければこの舞台の質はさらに向上したはずだ。

 死んだ男のアパートに、形見分けとばかり男の持ち物を取りにきた3人の女。男の上司の章子、かっての恋人で男の子供まで生んだ薫、今の恋人で18歳の早紀。
 それぞれの女性の思惑を語らせることで、3人の女性と男との関係、それぞれの女性の個性そして男の個性までをうまく表現する。けっこう突っ込んでいながら不自然にならない会話もいい。テンポと演出の切れにときどき翳りが見えるのはまあしかたがないか。ただ、甘さについてはどうしても気になるのだ。

 私が甘さと考えるところを見ていこう。
 男が超プレイボーイで、つきあったというか関係した女性のあらわな写真をたくさん持っていたこと。男をわざわざここまで矮小化する必要があったのだろうか。
 章子が男をひき逃げしたことが示唆されること。ならば男の子供を妊娠している章子と男との関係がもう少し突っ込んで描いたほうがいい。
 ゲロのかかったピザを管理人にあげること。こんなふつうの生活ではすることがない行為を何でするのだろう。
 これらはいずれもいずれもせっかく積み上げたリアルさを壊している。幅を広げてもいない。この劇団の演劇センスを評価するだけに、このようなことがとても気になるのだ。

 すっきりした装置がいい。演技もていねいで、人物をよく表現している。

 この劇団は私がその今後を最も期待する劇団だ。その劇作と演出のセンス、演劇への姿勢は福岡でも随一だと思う。さらなる精進を期待する。
 この作品は、まどかぴあ芝居クリエーション2002KIN−DO芝居の1作品目で、きのうときょうで3ステージ。私の観た回では空席が目立った。


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