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《2002.11月−2》

ことしいちばん◎笑った
【ひのひのふう〜私が10kg太ったら〜 (PA!ZOO!)】

作:こっち田邦子(あみる) 演出:うみのはいね
3日(日) 13:00〜14:40 ぽんプラザホール 1200円


*** 推 敲 中 ***

 この舞台、ことしいちばん笑った。
 その笑いは、仕掛けよりもデテールにこだわっている。生きのいいセリフを生きのいい俳優が生き生きと演じているが、勢いだけではなくやりとりの緩急のつけ方、その呼吸が実にいいのだ。

 今回は出産に係わる大小の多くのエピソードを徹底的に詰め込む。
 四姉妹の三女が出産間近。独身の四女は三女と同居、そこに独身の次女が来る。この次女が年下の男の子供を妊娠している。そのあと訪ねてくる長女夫婦も入って、出産と愛とか家族生活が語られる。姉妹それぞれの個性もくっきり描かれ、ストーリーにうまく絡ませる。

 最終的にはしんみりということにはなるが、観ている間は笑いっぱなしに近い。
 各人がそれぞれの立場で軽くポンポンと飛び出してくるセリフが実に心地いい。それを役者はやや強調しながら演じるが、人物の一生懸命振りとか思い込みや勘違いによる笑いがたくさん散りばめられている。

 俳優はその役への入れ込みが実にいい。その上で、いかにもという状況にみごとに反応する。隅っこの方にいる俳優も当然に舞台の一部としてきちんと演技していて、福岡では珍しいくらい舞台ごと観客を引っ張っていく。
 四姉妹(渡辺一心、macomo、ぎゃお、英愁)、長女の娘(渡辺一心の二役)、中華屋の桐子(ともつ)は圧倒的に安定していて呼吸もぴったりだ。笑いは役柄をきちんと捉えた上でもう一発突っ込んだところから生まれている。脚本のていねいさもさることながら、それを膨らませる演技はさすがだ。

 装置と小道具の使い方も手慣れていてレベルが高い。
 装置は徹底的にリアルな居間がそこにある。加湿器は上演中ずっと蒸気を噴き出しシュルシュルと音を立て続けている。
 小道具は、保育園での子どもの手作りおもちゃにはじまり、練習用の赤ちゃん人形まで多種多様なものを実に的確に使いストーリーに絡める。それもこれ見よがしではない。

 以上のようにこのごろ出色の舞台だった。強いて不満をあげるならば、うまくまとまり過ぎていると思えることぐらいだろうか。
 この内容で前売り1200円は圧倒的な安さで、2000円が妥当だ。観客としてはコストパフォーマンス抜群。もっともっと観客が増えていい。
 この舞台は今月2日から4日まで7ステージ。私が観た回はほぼ満席だった。


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