いかにも身の丈にあったという舞台で、楽しめた。
この作品は4年ぶりの再演ということだが私は初見で、軽く切れ味のいい舞台は瀟洒な劇場での瀟洒な公演にマッチした仕上がりになっていた。
4つの小品にプロローグとエピローグがついたオムニバス上演だ。共通するのは題名どおり「風」。
プロローグでは、風の便りを届ける鳥男と台風に生き生きとする少年が電信柱の上に立つ又三郎を見る。風の楽しさを予感させる。
第一話「風にまぎれて」は台風が好きな女と通りがかりの男の話。
ふたりのテンポのいい会話がいい。男から、見られたら落ちるから眼をつむれと言われた女、飛んでいる又三郎を見てしまい又三郎は墜落。
第二話「風はどこから吹いてくる」は、女子高生とその家庭教師の話。
両親が帰れず家にふたりだけになった女子高生と家庭教師の男。度を守って男は吹きすさぶ台風のなかに出て行くのだが、風雨にさらされて男は豹変して別人のように荒々しくなって女に迫る。その豹変ぶりが強烈で面白い。
第三話「風の尖端」は人形相手にダーツする男とダーツを拾って持ってくる役目の男の話。
ダーツする男はいやになって拾う男と役目を交代しようとするが拒まれ、人形の代わりに的になる。大正時代の文士ようなくそていねいな会話が作る雰囲気はいいが、展開が弱くインパクトがない。
第四話「風のあとさき」は台風準備の夫婦の話。
何を探していたか忘れてしまった妻に、思い出させようとする夫。台風が運んでくる非日常の楽しさを停電などをからめて描いているが、変化に乏しく展開のテンポがのろいのが難点だ。
後半が若干だれたが、脚本のアイディアのよさとメリハリのある演出と演技でメルヘンチックに仕上がっており楽しめた。
エンジョイスペース大名には初めて行った。客席は30。この劇団、このようなプライベートに近いような空間のほうが生き生きするようだ。この公演は2日間で4ステージ。私の観た回は満席だった。