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《2002.11月−15》

「美しきもの」を☆☆☆見てしまったよぉ
【くるみ割り人形 (ザルツブルグ・マリオネット劇場)】

構成:ザルツブルグ・マリオネット劇場
28日(木) 19:05〜20:45 福岡シンフォニーホール 3000円


 「美しきもの」を見てしまった。この世のものとも思えないような美しさだ。一流のものが持つ迫力を堪能した。
 ザルツブルグ・マリオネット劇場の福岡公演の演目は、バレエ「くるみ割り人形」。チャイコフスキーの曲にあわせて、マリオネットがバレエを踊るという趣向だ。セリフはない。

 クララはクリスマスに叔父さんからくるみ割り人形をもらう。
 人形を膝にのせたまま客間で眠り込んでしまったクララは、王子様に変身したくるみ割り人形とともに気球に乗って旅立ち、人形の国で世界中のいろんな踊りに目を奪われる。
 そして朝、クララは美しい夢の世界から目を覚ます。

 はじめから終わりまで、息を呑むような美しさの連続だ。
 幕開き、クララの家の前のシーンのリアルでありながら現実のものとも思えないような言いようのない美しさにびっくりする。前半はそのようなシーンも多いが、後半の夢のシーンは何もかもが徹底的にファンタスティックだ。
 舞台そのものが水族館の水槽を覗きこんでいるような風情だ。マリオネットの操作は舞台の天井に設けられている桟橋上でやる。舞台はけっこう奥行きがある。そこで多いときには10体ものマリオネットが華麗にダイナミックに動く。マリオネットを操る糸の本数はまちまちだが、20本以上あるものもある。
 装置と照明でみごとに夢の世界を作る。背景の転換などいつやったのかわからないうちに変わっているという手際のよさだ。

 圧倒的に楽しいのが、人形の国での世界の踊りのショー。ジプシー、中国、ロシアなどの踊りやあひるのダンス、キューピットが恋の矢を射るというような寸劇もあり、バラエティに富んでいて飽きさせない。
 人形の動きは実になめらか。バレエを踊るマリオネットの細やかな動きは、その肢体が豊かな表情を持つというレベルだ。
 登場するネズミの目が光ったり、中国の踊りのとき日傘が廻ったりと、細かいところまで緻密に作り上げている。

 このように、とても満足した。前から2列目中央部の席で、舞台に近くてよかった。
 福岡ではこの1ステージだけ。観客には年配者が多かった。観客は主に1階にいて、1階座席の7割くらいの入りだった。


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