福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2002.12月−8》

常識の弾丸の◆◇◆射程距離は短い
【青色大王 (クロックアップ・サイリックス)】

作・演出:川原武浩
9日(月) 19:30〜20:35 ぽんプラザホール 2本通し2800円


 いろいろと色づけはされているが、テーマも発想も常識の範囲にとどまっていることが、この作品をこじんまりと深みのないものにしてしまった。
 川原武浩に一般的な劇的感興を壊す意思はあっても、この作品ではほとんど何も積み上げられていないから壊しようがない。

 ストーリー性は弱くイメージが先行するという作りで、テーマは科学の進歩の非人間性の告発である。
 舞台には、4つの踏み切り信号と3つの踏み切り遮断機が置かれる。中央に置かれた箱が、科学の進歩を象徴する列車だ。加速し続け止まれない、破滅に向かうしかない列車だ。
 男女のふたり芝居で、ときに研究者と助手というような具体的な役もするが、ふたりの関係は常に変転する。

 饒舌な舞台だが、内容のなさにはうんざりする。
 前半は本論にからまない中途半端な遊びばかりだ。長々と「あっち向いてホイ」をやることに何の意味があるか。「○○スキー」の言葉あそびにしろ陳腐で何も表現しておらず、劇的な感興もなく見るに耐えない。俳優の動きのおもしろさ、言葉あそびのおもしろさがたまにはあるが、大部分はたいくつだ。
 後半は、テーマ丸出しの直裁で生煮えのセリフばかり。それも一般常識の範囲を一歩も越えず白ける。空回りだ。

 どんな風につまらないのだろうか。
 前半について言えば、意図的に無意味なセリフを並べているとは思えなくなった。書いているほうは一生懸命でしかもまともな作品を書いていると思っているらしい。それでおもしろいと思っているらしい。そのおもしろいと思うレベルが低すぎる。無意味なセリフでも勢いがあれば許せるが、それもない。
 後半は、一本調子のダラダラ叙述ばかりで、捉え方も一面的で、何の対立もなく深まりようがない。科学万能への警鐘にしろ、この作品は何も乗り越えず何も示さない。ただ思わせぶりなだけだ。構成力もなさすぎる。常識を疑い常識の先を見ようと攻めれば自然に構成力はつくはずだが、とてもそこまで至っていない。常識を疑う気があるのかさえ疑わしい。

 川原武浩がこんな底の浅い芝居を自分でも観たいと思って作っているとしたら、その空回り肯定の演劇観は改めたがいい。これが理想の芝居だというなら何をかいわんやだ。
 この作品は芝居屋コロシアム2002の4作品目。観客数はどうだったっけ? 忘れてしまった。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ